photo 小黒冴夏
photo 小黒冴夏

 また試合に向けた挑戦心もちりばめられていた。演技前半には4回転トーループを軽やかに成功。後半では「1回転─3回転」という連続ジャンプを跳んだ。一見するとミスしたかのようなジャンプだったが、その理由をこう説明した。

「僕は試合で連続ジャンプを本当に跳ばないので、スピードのないところから連続ジャンプを跳ぶ練習をしています。皆さんから見たら失敗したかなと思うかもしれませんが、あの予定でした」

 宇野は、試合本番になると「4回転─3回転」を「4回転─2回転」にするなど、とっさに安全策に変えてしまうことがある。気持ちの壁を乗り越えるべく、ショーで自信を高めておこうという新しい練習だった。

■休む部分を見つける

 シーズンインに向けて宇野は改めてこう語る。

「僕が今後取り組まなければならないのは、ちゃんと休む部分も見つけなければならないということ。年齢も重ねていくなかで、一年中ずっと稼働しているとどこかでけがのリスクにつながっていきます。多くの方にサポートしていただきながら乗り越えていきたいです」

 そして、このエキシビションナンバーも体を休める一つの策であることを打ち明けた。

「(19~21年シーズンの)グレート・スピリットも、(昨季の)オーボエ協奏曲も、その前年にエキシビでやっていたもの。ショーで1年間練習することによって、次のシーズンの(SPに使うと)スタートが楽になります。時間を有効に使い自分を休ませる期間を作るという意味がある。来年の候補の一つとして考えています」

(ライター・野口美恵)

AERA 2022年9月12日号

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