宍戸教授は、将来に向けて期待する水素に関する技術を説明してくれた。
水(H2O)には水素が含まれる。その水素と大気中の二酸化炭素(CO2)を化学反応させるとメタノール(CH3OH)が生成される。
「メタノールからはいろいろな物質をつくることができるので、これまでの石油から物質をつくるという体系を変えることができます。石油は地下から掘らなければならず、さらに燃焼時にCO2を排出してしまいます。水素を使えばCO2は排出しないため、環境にもよいのです」(宍戸教授)
ただ問題は、大気中からCO2を取り出す難しさにある。
「空気中のCO2は400ppmです。簡単に言うと0.04%で1万個の分子のうち4個がCO2の分子となります。非常に少ない分子を回収する技術が必要です。工場の排ガスはCO2が20%ほどあるのでそれを効率よく回収し利用することが重要と考えられます」
水素の技術とはいえ、水素をつくる、利用するには他の要素も必要になる。とくに環境のこともあり、CO2をどう取り込むかなども同時に研究する必要があると宍戸教授は強調する。
「水素とCO2の技術は表裏一体です。そして地球環境などのことも踏まえ、科学はより循環型社会への貢献に向かっていくべきだと考えています。そんななかで水素が今後、エネルギーの鍵となってくるのは間違いないでしょう」
※週刊朝日 2023年1月27日号