ジョンソン英首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙の結果が5日発表され、リズ・トラス外相(47)が新党首に選ばれた。6日にエリザベス女王に謁見し、次期首相に任命される。英国では3人目の女性首相となり、タカ派で英国経済の立て直しを主張する姿勢から、「サッチャー2.0」とも称される。相次ぐ不祥事で辞任に追い込まれたジョンソン氏に変わり、”強い意思”で英国を生まれ変わらせることができるか。
党首選は7月に始まり、決選投票でトラス氏と、インド系のリシ・スナク前財務相(42)の一騎打ちとなった。当初はスナク氏が大本命で、トラス氏を大きく引き離していた。それが後半にかけて失速してしまった。
首相になれば「アジア系初」となるはずだったスナク氏の誤算は、人気者のジョンソン氏を早々に「裏切った」からだろう。財務相に取り立てられた恩を捨てて真っ先に批判し、党員の不興を買った。妻は「インドのビル・ゲイツ」と呼ばれる富豪を父に持つスーパーセレブで、脱税疑惑まで持ち上がる始末。エネルギー価格の急騰を始めとする歴史的なインフレにあえぐ国民からは「金持ちには、この苦しみは理解できない」などと反発を招いた。
また、トラス氏と1対1のテレビ討論では、彼女の発言を12分で20回も阻んだ。「聞く耳を持たないスナク氏は、首相にふさわしくない」との判断を下されてしまった。
一方のトラス氏は「就任初日から減税政策を始める」と訴え、年300億ポンド(約4兆8500億円)規模の大型減税を掲げる。また、高級スーツを着こなすスナク氏に対し、4.5ポンドのイヤリングを身につけているという彼女の好感度は増すばかり。有力議員も雪崩をうってトラス氏支持に回った。
そんな新首相の座を射止めたトラス氏とは、一体どんな人物なのか。
1975年7月生まれ。父は数学者で名門リーズ大学の教授、母は看護師で教師でもある。トラスの姓は母方からとった。両親は左派的な考え方を持つといい、彼女が保守党から立候補した際は、激しく批判されたという。母は同意したものの、父は否定したままだ。