英保守党党首選の討論会に出席したトラス氏(右)とスナク氏(ロイター/アフロ)
英保守党党首選の討論会に出席したトラス氏(右)とスナク氏(ロイター/アフロ)

 オックスフォード大学に進んだ彼女は、多くの首相を輩出したことでも知られる看板学科のPPE(Philosophy, Politics and Economics:哲学・政治学・経済学)を卒業した。ロイヤル・ダッチ・シェルやケーブル・アンド・ワイヤレスで働き、管理会計士の資格を取得している。

 2010年に国会議員となり、4年後には環境・食糧・農村地域相、その2年後には司法相、大法官に任命された。女性・平等担当相や外相を務めるなど、輝かしいキャリアを駆けのぼってきた。

 夫は会計士のヒュー・オレアリー氏(48)。保守党の会議で知り合い、00年に結婚した。フランシスとリバティーという2人の娘がいる。

 絵に描いたようなエリートだが、タブロイド紙に不倫疑惑を報じられたこともある。相手の男性は離婚に至ったが、彼女は夫に生涯の愛を誓い、「不倫サバイバー」と呼ばれたりもした。

 トラス氏はすでに組閣の準備に取りかかっており、「チーム・リズ」のメンバーが決まり始めている。国内では景気浮揚策を矢継ぎ早に打ち出す一方で、ロシアに対しては強硬姿勢を一段と強める考えだ。「ロシア軍をウクライナ全土から押し出さなければならない」と発言するなど、基本的にジョンソン氏の姿勢を踏襲すると思われる。

 政策や政治スタイルから故サッチャー元首相と比較されることが多く、「鉄の女」の再来との呼び声が高い。だがトラス氏は「なぜ決まってサッチャー氏と比較されるのでしょう。私は私です」ときっぱり。そんな彼女は6日、スコットランドのバルモラル城に赴き、休暇で滞在中のエリザベス女王と謁見する。女王がバッキンガム宮殿以外で首相を任命するのは、在位70年で初めてだ。

 かつて19歳だったトラス氏は、王室廃止を力強くスピーチしたことがあった。その後、「後悔している」と話しているものの、女王と対面して組閣を委任されるのは、ことさら感慨深いかもしれない。

(ジャーナリスト・多賀幹子)

※週刊朝日オリジナル記事

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