この技術はすでに様々な分野で活用されており、同社は昨年5月に健康関連ベンチャーのICheck(アイチェック、東京都千代田区)と業務提携し、がんをにおいで検出するための基礎研究にも取り組んでいる。
同月にはパナソニックインダストリーと東京大学などの研究グループが、人間の呼気のにおいから個人を識別するシステムの開発をするなど、続々と新技術が生まれているが、においをデータとして保存や分析するだけでなく、においそのものを再現する技術もすでに実現している。
昨年4月に東京工業大学の中本高道教授は、多様なにおいの基本となる20種類の「要素臭」を植物の芳香成分から抽出に成功したことを発表した。「色の3原色」のように、それらの構成比を変え調合することで、レモンやラベンダーといった185種類の香りの再現が可能だという。
「実験に成功したのは植物由来のにおいですが、例えば食べ物などにも要素臭は存在すると考えられ、様々なにおいを再現できる可能性は高い。この技術が映画やテレビなどで活用されれば、これまでにない新しい体験を提供できると思います」
においのデジタル化で芳しい未来となるのか。
※週刊朝日 2023年1月27日号