安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、「宗教2世」がクローズアップされている。悩む子どもたちは以前から少なくないが、救済策が整っていないのが現状だ。AERA 2022年9月5日号の記事を紹介する。
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安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者=殺人容疑で送検、鑑定留置中=が、「母親が旧統一教会に入信し、教会への献金で生活が苦しくなった。恨んでいた」と供述して以降、「宗教2世」が注目されている。
山上容疑者自身はツイッター上で他の2世をバカにするような発言をするなど、自分を2世だと自覚していなかった節はあるものの、親がなんらかの宗教に入信していることにより、悩みや生きづらさを抱えたり、虐待を受けたりする子どもたちは確かに存在する。
「今に始まった問題ではありません」
と話すのは、カルト宗教を取り上げるニュースサイト「やや日刊カルト新聞」総裁の藤倉善郎さん。その指摘の通り、1985年、交通事故に遭った息子への輸血を「エホバの証人」を信仰する両親が拒否した「大ちゃん事件」が起きたり、90年代にオウム真理教のサティアンで生活していた子どもたちが保護されたりするなど、2世をめぐる事件はこれまでも起きていた。
相談窓口すらない状況
だが、報じられるのは、どれも特殊な世界のことに感じられる内容ばかり。大きな社会問題になることはなかった。
「宗教やカルトが絡むとわかった途端、無視されてしまう。虐待やネグレクトを超える問題だと思うが、相談窓口すらない状況が続いてきた」
と話すのは、京都府立大学文学部の横道誠准教授。自身はエホバの証人の2世で、当事者研究をしながら、オンラインで自助グループを主宰している。
「子どもの虐待ホットラインなど、親子関係の悩みを受け付けている窓口に相談しても『宗教のことは、おうちで解決してね』と言われ、助けてもらえなかった事例は多い」(横道准教授)