2000年代に数々のバラエティ番組で活躍し、「どこ見てんのよ!」という流行語も生み出したタレントの青木さやかさん。2021年に出版した『母』が話題となり、最近では文筆家としての評価も高まっています。
今回ご紹介するのは、そんな青木さんによる書き下ろしエッセイ『厄介なオンナ』。40代も後半となった日々を精一杯生きる彼女の本音が詰まった一冊です。
タイトルにもなっている通り、青木さんはとっても"厄介なオンナ"。よく一緒に仕事をしたという飯島 愛さんとの思い出を綴りながら、「芸能界という世界の中で商品であるには、わたしはちょっと繊細すぎて、厄介であった」と自身を振り返ります。
そして、ブレイクして有名人になった当時のことを、「世の中全員、わたしを忘れてください」と叫びたい気持ちでいっぱいだったと明かしています。「それが、あのときのわたしだったのだ」「何をしているときが楽しいか? もしかしたら楽しい人は何をしていたって楽しいんだと思う。わたしは、何をしていたって楽しいことなんてひとつもなかった」という言葉には、繊細な中にもちょっぴり厄介な性分が見え隠れしています。
けれど、世の中をすいすいと要領よく生きられない青木さんはとても人間臭く、共感を覚える部分があるでしょう。同書を読んでいると、青木さんの厄介さがだんだんと愛しくなってくるから不思議です。
現在はシングルマザーとして中学生の娘さんを育てている青木さん。自身の健康のこと、子育てや暮らしのことなど、日々悩みは尽きませんが、そんな中で、最近は仕事においてちょっとした心境の変化が訪れているようです。
同書に収録されているお笑いタレントの光浦靖子さんとの対談では、今後の野望について「私はね、もう一度売れてみようって思ってるんです。あんなにつらかった売れていた時代。かつては嫉妬心をエネルギーに変えていましたけど。いまは『楽しもう』と」(同書より)と語っています。一時は売れていたことが心辛かったのに......!? なんとも厄介な人だなぁと感じてしまいますが、こういう正直でまっすぐなところが青木さんらしいところなのかもしれません。実際、2021年には片桐 仁さんとコンビを組んで「キングオブコント」にも挑戦したそうです。
病気になったり、仕事で報われなかったり、恋人や結婚相手と別れてしまったりと、人生はいくつになってもままならないことが多いもの。そんな中で、青木さんの不器用ながらも自分や周りの人に誠実に、丁寧に生きる姿を見ると、「人間、厄介でもいいんだ!」とどこかほっとするとともに、ふわりと温かな気持ちに包まれるのではないでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]