AERA 2022年9月4日号より
AERA 2022年9月4日号より

■「苦しい、ひきょうな言い訳」(仲正昌樹)

 ただ、(旧統一教会と関係がある)日刊紙・世界日報への寄稿やインタビュー掲載が問題視されるのは、世界日報の記者も経験した私からすると微妙なところです。同紙の基本的な役割は、旧統一教会全体の狙いとからめて言うならば、政界や財界や官界、要するに社会を動かしているVIPの世界になるべく食い込んでいくこと。旧統一教会系とわかって取材に応じたのだから、その後に旧統一教会系の団体がアクセスしやすくなるわけです。しかし、編集方針は旧統一教会とは独立の立場でやっていたので、同紙の取材を受けたら広告塔になる、は少し違うと感じます。

 もちろん、取材を受けた政治家が「旧統一教会と関係があるとは知らなかった」と言うのは苦しい、ひきょうな言い訳かなとは思います。おそらく「旧統一教会系だけど、本体からは一応独立しているので取材くらいはいいだろう」と思って引き受けた人が多かったのでは。この批判の高まりの中で「そう答えちゃまずい」ので、「知らなかった」ということにしているのでしょうけど、そこは正直に言うべきだと思います。

紀藤:確かに世界日報は「平時」においては仲正さんのおっしゃる通りかもしれません。ただし、教団として何かの問題、例えば男女共同参画やジェンダーフリーに反対するキャンペーン、「純潔の思想」を浸透させるためのキャンペーンなどを打ち出していきたいとき、つまり「戦時」には、世界日報や、やはり教団と関係の深い月刊誌・ビューポイントなどが「動員」され、教団の運動に大きく貢献するんです。ほとんど機関紙・誌と同じ扱い。「政治家が旧統一教会のキャンペーンに利用される」という意味で、要注意の新聞社であることは間違いありません。

弁護士 紀藤正樹さん(左):1960年生まれ。全国霊感商法対策弁護士連絡会で、旧統一教会など宗教被害者の救済に取り組む。著書に『マインド・コントロール』など/金沢大学教授 仲正昌樹さん:1963年生まれ。専門は法哲学、政治思想史。旧統一教会の信者だった体験を書いた『統一教会と私』の著書もある
弁護士 紀藤正樹さん(左):1960年生まれ。全国霊感商法対策弁護士連絡会で、旧統一教会など宗教被害者の救済に取り組む。著書に『マインド・コントロール』など/金沢大学教授 仲正昌樹さん:1963年生まれ。専門は法哲学、政治思想史。旧統一教会の信者だった体験を書いた『統一教会と私』の著書もある

仲正:内部事情を知っている立場から言うと、世界日報の政治的なキャンペーンで旧統一教会本体がさほど関与していないであろうものもけっこうあるんです。例えば夫婦別姓について反対の記事を世界日報がやっていたのですが、これは教団の教義からすると少し変なんです。韓国は夫婦別姓なのでむしろ歓迎すべきことのはず。日韓祝福(日本の女性が韓国の男性に嫁ぐ)を受けている人たちにとって女性は当然別姓ですし、別姓反対に力を入れると矛盾が出てくるので教団は力を入れていません。世界日報だからこそやっている面があると思います。

紀藤:政治家と旧統一教会との関わりには、うっかり型から確信型までいくつかの段階があると言われています。もう一つ、忘れてはならないのが、そこに職務権限性があるかどうかです。被害者救済の立場から考えると、うっかり型と確信型なら後者に問題があるわけですが、何よりも職務権限がある人には自制してほしい。世界日報に出ることも。例えば現役の文部科学大臣が世界日報から取材を受けるという行為。文科大臣は旧統一教会を所管しているわけです。所管される側から取材を受けるのは、仮に旧統一教会の反社会性を脇に置いたとしてもおかしい。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年9月5日号より抜粋

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