今回、大手ネット証券からコールセンターにおける取り組みの一部を聞けた。松井証券コールセンター長の吉川真由美さんは語る。
「シニアのお客様からの問い合わせに寄り添い、不明点を解決していただくための応対研修を行っています。オペレーターでは対応しきれないケースは『お客様相談室』という部署が話を引き継ぎ、早期の円満解決に導く体制を組んでいます」
■自社の指針作成が急務
正当なクレームでも、解決までの通話時間が長引くと客側が怒り出し、カスハラに発展するパターンもある。裏返せば、早期の円満解決を増やすことがカスハラ予防に結びつくわけだ。
マネックス証券コンタクトセンター長の広畑美弥子さんによると、「長時間にわたり執拗に問い詰めたり、同じクレームを繰り返したりする顧客には冷却時間を設けるよう、オペレーターに指示している」という。トーク内容は“いったん社内で協議いたしまして、改めて私の上司からご連絡を差し上げます”。
「振り上げた拳を下ろしていただくためには時間が必要です。こちらも社内で熟考することで、お客様に納得していただける別の新しい提案を導ける可能性があります」
現在、正当性のあるクレームと、営業妨害に相当するレベルのクレームとの線引き作業を進めているところだという。基準を定めれば、「この内容はカスハラに該当する」とオペレーターが自分で判断しやすくなる。
「誰にでも判断できる線引きが難しく、時間がかかっています。今秋まで慎重に検討を進めたい。“さすがにそこまでは対応できません”という基準がなければ、従業員は疲弊してしまいます」(広畑さん)
厚労省も今年、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成・公開した(2月25日)。ただ、業種や業態などにより対応策は違う。自社用の「カスハラ指針」を別途作成し、理不尽に屈しない体制を整えたい。(編集部・小長光哲郎、中島晶子)