100回目の開催を祝い、たくさんの書き込みが(撮影・コミックマーケット準備会)
100回目の開催を祝い、たくさんの書き込みが(撮影・コミックマーケット準備会)

 多くの人から「仲間と会える喜び」という言葉が出てくるのを聞いて、私は1990年代、幕張メッセで開催時代のコミケに取材に行った時のことを思い出した。この時はおたく評論家の宅八郎氏(故人)が随行してくれた。

 当時の私は、コミケを“オタク”が同人誌を売る場所としか認識していなかった。周囲にも、コミケで多くの販売収入を得ていたマンガ家志望の知人がいたからだ。しかし、行ってみると、軍服のコスプレイヤーたちが集まって、互いのコスプレの出来栄えを見せ合ったり、同じ趣味の仲間と交流したりする目的で来場する人がたくさんいた。取材を通じて「表現の可能性を広げる“場”」というコミケの理念を実感した記憶だ。

 今回、その当時にはなかった種類のブースが多数出店していた。「同人CD」という音楽仲間が作った作品を売るサークルだ。100回記念のコミケでは、彼らがエリアの大きな一角を占める一大勢力になっていた。彼らの口からも同様の言葉が聞かれた。

「作品を発表したり、CDを売ったりするのはネットでいい。むしろネットのほうが楽。でも俺たちは今、集まることに飢えているんだと思う。だから今日は最高!」

 75年12月に東京・虎ノ門の日本消防会館で開催された第1回は、参加者700人の同人誌即売会だった。その後は板橋産業連合会館、四谷公会堂、川崎市民プラザなど、徐々に規模が拡大していく。81年の第19回からは晴海国際見本市会場に。86年の第30回では来場者が3万人を超え、規模は膨れ上がっていく。

 89年に幕張メッセで開催されると、毎年の夏コミではその行列ぶりが報道されるほどになった。96年からは東京ビッグサイトで開催。2019年の第96回では過去最多の73万人が来場した。コロナ禍で98回は中止、99回は昨冬に制限付きで開かれていた。

 記念すべき100回目の今回は、2日間で計17万人が訪れた。時代とともにその様相を大きく変えてきたコミケだが、参加者たちは昔と変わらず、「同志と会える喜び」を満喫したようだ。

週刊朝日 オンライン限定記事