中村福之助(左)と中村歌之助(撮影/伊ケ崎忍)
中村福之助(左)と中村歌之助(撮影/伊ケ崎忍)

■今回は良いチャンス

歌之助:僕も去年11月の「花競忠臣顔見勢」や今年6月の「信康」など、新しく作り直すという現場は勉強させていただきましたが、一から作る作品に参加するのは初めてです。勘三郎のおじは、新作歌舞伎も何十年何百年と続けば古典になるとよく言ってましたが、「新選組」が自分の子どもであったり、孫ができたときに古典になっていたらいいなと思います。手塚先生の作品はたくさんありますから、今回を機にいろんな作品を歌舞伎につなげていけたらいいですね。

福之助:歌之助は本当に歌舞伎っ子。小さい頃から家でずっと芝居の映像を見ていたから、そういうことがどこかで実を結べばいいなって思っていました。僕たち3兄弟で劇場一つを開けるのが目標だから、今回は良いチャンス。「新選組」には兄の橋之助も出演しているから、最後まで二人で歌之助を支えていきますよ。

歌之助:大作役はどうですか。

福之助:大作はちょっと謎めいたキャラクター。話を引っ張っていく存在でもあるので話の腰を折らないように勤めたい。お客様には、漫画を読んでない方なら見た後に漫画を読みたいと思ってほしいし、漫画を読んだ方には「なるほど。これってこうやって歌舞伎になるんだ」と双方に納得してもらえるようにできればいいですね。

■必要とされる役者に

――二人が父芝翫、兄橋之助とともに襲名して今秋で6年になる。この6年の成長をどうとらえているのだろうか。

福之助:歌之助は芝居の空気感がわかっていてセンスがある。そこは自分のセンスを信じて進んでいってほしいと思っています。

歌之助:自分ではこの6年で成長しているのかよくわからないですが、いろんな先輩方とご一緒するなど、経験を積ませていただいたことは大きかったです。今まで以上にお客様の大事な時間をいただいて芝居をするということに、すごく責任を感じるようになりました。玉三郎のおじ様の公演に出させていただくと、おじ様の芝居を見たいというお客様が沢山いらしているのを感じます。そんな必要とされる役者にどうすればなれるのか。ただ歌舞伎が好きということよりも、どういう役者になっていかなければならないか、ということをコロナ禍に入ってから特に考えるようになりました。

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