(※写真はイメージ 撮影/写真部・松永卓也)
(※写真はイメージ 撮影/写真部・松永卓也)

 正月気分も覚め始めた1月6日昼過ぎ、「吉川祥子」はいつものように、大阪府東大阪市内の弁当屋にいた。注文したのは、390円の天丼に210円の「手づくり玉子(たまご)焼き」。だが、これが最後の注文になった。

 弁当屋の店長が語る。

「年末年始をお休みして、最初に来たのが1月6日やったと思います。普段は割りばしをいらないって言うのに、このとき初めてハシを求められた。弁当と別におかずを付けたのも初めてや思うし、何よりも弁当はこれまで2人分だったのに、1人分だったのは初めてなのでよく覚えています」

 弁当は、1人分でよかった。彼女が17年連れ添った相手はもう、そばにはいない――。その4日後、彼女は警視庁大崎署に出頭し、約17年ぶりに本名の「斎藤明美」を名乗った。

 明美容疑者と平田信容疑者が大阪へやってきたのは15年前のことだ。

「大阪では3カ所に、最初は1年あまり、次は7年、その次は7年と計15年、住みました。仲居、喫茶店員、事務員などの仕事をしました」(明美容疑者が滝本太郎弁護士を通じて発表したメッセージ)

 うち14年は東大阪市で暮らし、「吉川祥子」は十数年前、同市内の整骨院でアルバイトとして働き始め、2000年夏に正規の従業員になった。

 勤務日には整骨院から昼食手当1千円を支給され、平田容疑者の分と2人分の弁当を買っていた。冒頭の弁当屋に明美容疑者が現れるようになったのは約5年前で、平日の午後2時前後にほぼ欠かさず通っていた。定番は唐コロ弁当(390円)と、のり弁当(290円)の組み合わせだった。

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