『富士山噴火 その時あなたはどうする?』の著書がある京都大名誉教授の鎌田浩毅氏は「個人でも富士山噴火のシミュレーションを把握して対策をしなければ、被害が拡大する」と警鐘を鳴らす。それではいったいどういった被害が想定されているのか。シミュレーションの一部を紹介しよう。
噴火してまず被害をもたらすのは噴石と火山弾だ。噴石は数センチのものから数十mを超えるものもある。小さいものでもピストルの弾並みの速さで人を即死させることもある。火山弾は固まっていないマグマで、400~500度もある。噴石は一般的に直径1mを超えるものは火口から2キロ前後の範囲に、それより小さいものは4km前後の範囲に降ることが多いとされる。しかし、風向きによっては10kmを超えて飛ぶこともある。
日本の東西を結ぶ大動脈とも交通インフラを寸断するリスクがあるのが、溶岩流と融雪型火山泥流(でいりゅう)だ。
仮に富士山の南東側・静岡県側で噴火し溶岩流が出た場合、新東名高速道路は最短で1時間45分、東名高速道路は2時間15分、東海道新幹線の三島駅付近は5時間で到達する恐れがある。
融雪型火山泥流とは、火砕流などによって大量の雪が溶かされ、岩石や火山灰などと交じり合って山腹を流れ落ちていく泥流のことだ。融雪から泥流になるまで時間がかかるとされるが、時速十数キロの速さで、自動車も樹木も簡単に押し流してしまう。発生からわずか12分で新東名高速道路、20分後には東海道新幹線にまで押し寄せる危険がある。
被害の想定や対策で盲点となっていたのが、降灰だ。実はこの灰こそ、首都圏にも大きな被害をもたすとみられている。内閣府の中央防災会議のワーキンググループが試算した降灰シミュレーションによると、首都圏で降灰が最大となるケースでは、山梨県で4773万立方メートル、静岡県で4086万立方メートルだが、神奈川県で1億5734万立方メートル、東京都で1億1707万立方メートル、千葉県で5915万立方メートルと首都圏の方が火山灰量が多くなっている(いずれも15日間の累積の数字)。空高く上がった火山灰が偏西風に乗って首都圏を中心に降灰する可能性があるということだ。