「転じて、●●という意味になった」――辞書でみられるこうした説明のように、時代によって意味が変わる言葉は多いもの。言葉のうんちくを紹介します(朝日新聞出版『みんなの漢字』から)。
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■割愛(かつあい)
人や物事に対する愛着を断ち切る
「愛」を「割る」とは、どういうことでしょうか。もともと「割愛」とは、仏教で人や物事に対する愛着の気持ちを断ち切ることを意味します。そのため、「愛」という字が用いられているのです。したがって、本来は「惜しいと思いながら、思い切って」捨てたり、省略したりする意味なのですが、今では「不必要なものを」捨てたり、省略したりする意味で用いられることが多くなっています。
■苦肉(くにく)
敵を欺くために自分自身の肉を苦しめる
ここでの「肉」は、「自分自身」という意味です。「苦肉」とは、敵を欺くために自分自身を苦しめることなのです。『三国志演義』で、黄蓋(こうがい)という武将がわざと味方から鞭打ちの刑を受けて敵に投降することで信用させ、敵軍を内部から切り崩した策が語源といわれています。そこから、「考えあぐね、苦労した末の策」を「苦肉の策」というようになり、さらには「苦し紛れの策」という意味で用いられるようになりました。
■紳士(しんし)
大きな帯を身につけた官僚のことだった
「紳」は、古代中国の官僚が身につけた大きな「帯」のことです。彼らは、帯に木の札などを差し挟んだので、「差し挟む」という意味の「縉(しん)」と合わせて、「縉紳(しんしん)の士」と呼ばれました。それが日本に伝わると、官僚だけでなく、身分の高い人も表すようになり、のちに「紳士」と略されるようになったのです。
■噴飯(ふんぱん)
笑いをこらえられず「飯」を「噴」き出す
「噴飯もの」というと、「腹立たしくてしかたのないこと」の意味にとられることが多いようです。しかし、正しい意味は「おかしくてたまらないこと」です。おかしくてたまらず、口の中の「飯」を「噴」き出して笑ってしまうことから、「噴飯」というのです。怒りのイメージになったのは、「噴」と字が似ているりっしんべんの「憤」を用いる「憤怒」や「憤慨」の影響などが考えられます。