新しい価値観をつくり出し、時代を牽引する人たちは、何を大事にしているのか。アエラは今回、社会に新たな視点を提供してきた4人に、それぞれの思考やこだわり、価値観を変える人を教えてもらった。「価値観を変える」を特集したAERA 2022年1月3日-1月10日合併号の記事を紹介する。
【写真】ウスビ・サコさん、吉藤オリィさんら推薦人4人はこちら
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2021年。一人の野球選手の一投一打に世界が熱狂した。米メジャーリーグ選手、大谷翔平(27)だ。打っては46本塁打、投げては9勝を挙げ、メジャー史上初の投打5部門で「クインティプル100」(投球回、奪三振、安打、打点、得点)を達成し、ギネス世界記録にも認定された。
アマチュア野球では投打にチームの要となる「エースで4番」は少なくないが、投手と野手は練習メニューや調整法が全く異なり、投打どちらかを選ばなければ一流になれないとされてきた。大谷はこうした従来の価値観を鮮やかに壊したのだ。
■他者通して自分を理解
時代とともに、旧来の価値観やかつての成功モデルが通用しなくなってきた。特に新型コロナウイルスの感染拡大によって私たちの生活は一変し、価値観のアップデートを迫られている。アエラは今回、社会に新たな視点を提供してきた4人に「価値観を変える人」を推薦してもらった(下記に推薦理由とともに掲載)。新たな生き方のヒントを学びたい。
西アフリカ・マリ共和国出身でアフリカ系として初の日本の大学学長となったウスビ・サコ京都精華大学学長(55)は、変えるために必要なこととして「他者との協働・協奏」を挙げた。人は他者を通して自分を理解することができ、他者と力を合わせることで物事を解決していくことができるという。自身も多くの人と話すことを心掛け、自分の価値観を絶対視せずに、ほかの人の意見を受け入れる姿勢を大切にしている。身近な人間関係の中での小さな気づきや変化が重なったその先に、社会や世界の変化があると考えている。
一方、分身ロボットを開発し、重度身体障害者の遠隔就労の可能性を切り開いた吉藤オリィさん(34)は従来の価値観にとらわれずに変化していくためには、テレビ等のメディアを見ないようにし、他人の講演会にも行かないという。
「変えるためにはまず理解者がいなくてもやり続けること、そのうえでうまく他人を巻き込むことが必要だと思います。他人が去って一人になってもやり続ける、その繰り返しです」
気鋭のアナキスト文人として注目される政治学者の栗原康さん(42)が常に変化していくために意識していることは、
「大人にならないこと。駄々をこねること。わけのわからぬ出会いに身を任せること」