
耳の聞こえる子どもは自ずと両親の通訳者になる。ルビーもロッシ家が漁師共同組合を設立したことで、ますます事あるごとに引っ張り出され、自分の将来を見失いかける……。家族を愛しながらも、コーダとして生きるルビーの葛藤がリアルだ。
■感情をぶつけられた
撮影終了時には「言葉のことを考えずに表現することができた」ほどASLの実力をつけた。ASLの学びはジョーンズに多くの気づきを与えたようだ。
「俳優は演技をしている時は常に、自分の発する言葉と気持ちが繋がっていたいと望みます。今回第1言語でない表現方法で演技をすることが少し怖いと思っていたのですが、演じてみたらASLのほうが感情をぶつけられるし、自分の言いたい言葉と繋がれることに気づいた。コミュニケーションの本当の意味を知ったような気がします。頭でごちゃごちゃ考えすぎずに、心でコミュニケーションを取ることも学びました」
もともと「努力を惜しまないタイプ」だと言うが、この映画を通してさらに、「やり抜く力が本当にあるんだとわかりました」と満面の笑みを浮かべた。(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2022年1月3日-1月10日合併号

