政府が大株主の日本郵政グループで、旧来の「隠蔽体質」が復活してきたのだろうか。全国郵便局長会から頼まれ、8億円超の会社経費を気前よく支出しながら、不正流用の疑いが持ち上がったあとも、経費の一部が同会側に流れたかどうかは頑なに隠している。
昨年末のクリスマス・イブに開かれた記者会見で、日本郵政の増田寛也社長が態度を豹変させる一幕があった。
不正流用が疑われる億単位の会社経費について、経費の一部が郵便局長でつくる団体に流れたかどうかの1点だけは、繰り返し質問されても決して明かそうとしなかった。わずか1カ月前の11月末の会見では、「調査で明らかになる」と説明していたにもかかわらずだ。
話はわりと単純である。
12月22日に公表された外部弁護士の調査報告書によれば、日本郵便は2018年8月、全国郵便局長会の担当者から郵便局1局あたり50冊、計100万冊のカレンダー購入を要望され、担当役員らが要望の理由も聞かずに購入を認めていたとされる。カレンダーの注文期限が翌9月に迫るなかでの経費支出で、よほどの事情があったように映る。
さらに翌年は、日本郵便の代表主幹統括局長を兼ねる全国郵便局長会会長らから、購入本数を1局当たり100冊に増やすよう頼まれて承認。その結果、昨年度までの3年間で計507万本を購入し、8億189万円を支出した。
では、全国郵便局長会はなぜ、2018年8月になって、注文期限が近いカレンダーの購入を急に日本郵便に求めてきたのだろうか。
前出の報告書では触れていないが、問題のカレンダーは2018年以前も局長の政治活動に使われており、以前は郵便局長会側の経費で買われていたとみられる。さらに、日本郵便の経費が充てられるようになった2018年以降も、全国郵便局長会が政治活動の支援者らにカレンダーを配るよう指示していたことが明らかになっている。
その結果、全国郵便局長会が政治目的での配布を指示していたカレンダーの経費が、日本郵便によって肩代わりされていた構図となっている。それでも日本郵便は「支援者は郵便局の顧客でもある」という理屈を持ち出し、目的外に使われた疑いの強い経費の返還などは求めないとしている。