宮下氏がマスコミで取り上げてほしかった局長会の「社会貢献」とは、このような「最後の砦」であり続けることだろうか。だが、信頼が現れるという「得票」を増やすための政治活動を巡り、不正疑惑がその後に続々と発覚していることはご承知のとおりだ。

 会社経費で買ったカレンダーを政治流用した疑惑は、日本郵便の不十分な調査によって宙に浮いたままだ。現場の局長からは顧客情報を局長会の政治活動に流用したとの申告が噴出。流用された個人情報にはゆうちょ銀行やかんぽ生命の情報も含まれ、モラル低下は深刻な事態がうかがえる。

 宮下氏に話を聞こうと、九州地方郵便局長会に取材を申し込んだが、担当者は「(発言内容は)会員向けの話であり、対外的にはコメントを控えます」と回答した。

 全国郵便局長会の末武晃会長は今年の年頭あいさつで、1.9万人の会員に向けてこう発信した。

「昨年の反省を踏まえ、『郵政事業及び地域社会のさらなる発展』に向け、会員が一丸となって前を向いて進める年にしたい」

 今夏の参院選に向けて「前回以上」の得票ノルマを強いられてきた現場の局長にとっては、顧客情報やカレンダーの不正流用を誘発させた根本原因の究明と、局長会幹部らが何を反省してどんな責任を感じているかの説明が欠かせないのではないか。

「反省」すべき中身をあいまいにしたままでは、前を向いて進むことなどできない。

(朝日新聞経済部 藤田知也)

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