上田慎一郎さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・松永卓也)
上田慎一郎さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・松永卓也)

林:また、ロケの場所がさみしい海辺とか、うらぶれた神社とかで、オシャレなのは最初に出てくる社長のオフィスだけですよね。何とも言えないわびしさが漂う風景なんだけど、それが若くして成功した社長の原点なんですよね。

上田:神社は、「次に来たときには消えてなくなっていそうな神社」をイメージして、スタッフに探してもらったんです。

林:ああ、すごくその感じが出ていましたよ。原日出子さんと渡辺裕之さんのご夫妻が、主人公のご両親の役で、いい味を出してますよね。

上田:本物のご夫妻で出ていただけるって、なかなかないんですけどね。渡辺さんは、「カメ止め」を劇場に見に来てくれて、一緒に写真を撮ったり、Tシャツを買ってくださったりしたんです。「声をかけてくれてうれしかった」と言ってくださいました。

林:私なんか若いときの原さんを知ってるから、30代の息子のお母さん役をなさってるなんて、びっくりしました。でも、悩みを抱えていそうな息子に、深入りしちゃいけないと思いつつも、心配で心配でしょうがないという感じが伝わってきましたよ。それで息子が、自分の身に起こったことを話すと、「見せてみなさい」って。あれは母親ならではのセリフですよね(笑)。

上田:あの言い方、「絶品やな」と思います(笑)。

林:私、IT社長ってそんなにたくさん知ってるわけじゃないけど、この映画を見てたら「いるいる、こういう感じの若い社長」って思っちゃいました。ビジネスの相棒役も、「出版社のコミック編集に、確かにこういう人いるな」って感じでした。

上田:けっこう取材してつくったので、自分が見たことある人、会ったことがあるような人をモデルにしてます。

林:相棒役の方、見ていて「いいなあ」って何度も思いました。

上田:アベラヒデノブさんですね。

林:セリフでいろんなことを説明してないんだけど、彼がなぜそういう行動をしたのかが、演技から伝わってくるんですよね。

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