函館市電「ハイカラ號」と同速度で走るクルマから1/30秒のシャッター速度で撮影。電車以外の周辺の景色は流れる不思議な一コマになった。青柳町~宝来町 キヤノンEOS 5 EF28-70mmF2.8L シャッター速度優先AE (1/30秒) ISO80フジクロームベルビア(撮影/諸河久:1994年7月13日)
函館市電「ハイカラ號」と同速度で走るクルマから1/30秒のシャッター速度で撮影。電車以外の周辺の景色は流れる不思議な一コマになった。青柳町~宝来町 キヤノンEOS 5 EF28-70mmF2.8L シャッター速度優先AE (1/30秒) ISO80フジクロームベルビア(撮影/諸河久:1994年7月13日)

 次のカットはBのケースによる流し撮りで、走り去る函館市電(現・函館市企業局)のレトロ電車「ハイカラ號」の後部を同速度で走る自動車車内から1/30秒のシャッター速度で撮影。周囲の景色の流れがAのケースと大きく異なることに注目されたい。

「流し撮り」成功の秘訣

 本稿ではAのケースによる流し撮りの考察を進めて行こう。流し撮りは以下の1~3の手順で撮影しよう。

1. 定められたフレーミングの中で流し撮りする被写体(路面電車)の動きを見極める。

2. カメラを構えた腰をゆっくり回転させ、ここと思ったところでシャッターを軽く押す。

3. 腰の回転は止めずにそのまま続ける。

「流し撮りをするぞ!」と力まず、肩の力を抜いた自然体で撮影することも成功の秘訣だ。

 筆者が路面電車の流し撮りに挑んだのは1968年頃で、流し撮りの入門書や自然体で撮影する教示などは皆無の時代だった。

筆者が流し撮りを始めた頃、習作として横浜市電の単車(12系統六角橋行き)を被写体に選択した。走行する電車の見極めが甘く、流し撮りの意識過剰により、同調ポイントが希薄な結果に終わった。浜松町~扇田町 アサヒペンタックスSV スーパータクマー55mmF1.8 1/60秒 f16 ISO400 コダック・トライX(撮影/諸河久:1968年6月23日)
筆者が流し撮りを始めた頃、習作として横浜市電の単車(12系統六角橋行き)を被写体に選択した。走行する電車の見極めが甘く、流し撮りの意識過剰により、同調ポイントが希薄な結果に終わった。浜松町~扇田町 アサヒペンタックスSV スーパータクマー55mmF1.8 1/60秒 f16 ISO400 コダック・トライX(撮影/諸河久:1968年6月23日)

 次の写真が横浜市電の単車をモチーフに流し撮りした一コマ。被写体の見極めが甘かったことと、流し撮りを意識して力んでカメラを回転させたことなどが相乗して、習作とはいえ、稚拙な結果だった。

動きを掴みやすい中望遠レンズ

 フレーミング中の路面電車の大きさを同一とした場合、レンズの焦点距離が長いほど見かけ上の電車の動きが遅くなるから、広角レンズより標準レンズ、標準レンズより中望遠レンズの方が路面電車の動きが掴み易くなる。

富山ライトレールの開業日は好天に恵まれた。ピカピカのLRVが満員の乗客を乗せて岩瀬浜に向う。フレーミングの中で車体の左端を凝視しながらスムースに体を回転させた。城川原~犬島新町 キヤノンEOS-1Ds MarkIIEF24-70mmF2.8L (70mm) 1/60秒f14 ISO100(撮影/諸河久;2006年4月29日)
富山ライトレールの開業日は好天に恵まれた。ピカピカのLRVが満員の乗客を乗せて岩瀬浜に向う。フレーミングの中で車体の左端を凝視しながらスムースに体を回転させた。城川原~犬島新町 キヤノンEOS-1Ds MarkIIEF24-70mmF2.8L (70mm) 1/60秒f14 ISO100(撮影/諸河久;2006年4月29日)

 次の写真は、旧JR富山港線をLRT化した「富山ライトレール(現・富山地方鉄道)」岩瀬浜行きのLRV(ライト・レール・ビークル)を被写体にして、デジタルカメラに装填したズームレンズを70mmにセット。フレーミングの中で先頭部運転台辺りの動きを見極め、カメラを構えた体を軽く回転させて流し撮りした。電車の速度が高かったために、1/60秒のシャッター速度でもかなりの走行感が描写できた。

 晴天に恵まれた富山ライトレールの開業初日は溢れんばかりの乗客が押し寄せ、各電車は満員の盛況だった。家並の背景には冠雪した立山連峰が写っている。

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