次のカットはBのケースによる流し撮りで、走り去る函館市電(現・函館市企業局)のレトロ電車「ハイカラ號」の後部を同速度で走る自動車車内から1/30秒のシャッター速度で撮影。周囲の景色の流れがAのケースと大きく異なることに注目されたい。
「流し撮り」成功の秘訣
本稿ではAのケースによる流し撮りの考察を進めて行こう。流し撮りは以下の1~3の手順で撮影しよう。
1. 定められたフレーミングの中で流し撮りする被写体(路面電車)の動きを見極める。
2. カメラを構えた腰をゆっくり回転させ、ここと思ったところでシャッターを軽く押す。
3. 腰の回転は止めずにそのまま続ける。
「流し撮りをするぞ!」と力まず、肩の力を抜いた自然体で撮影することも成功の秘訣だ。
筆者が路面電車の流し撮りに挑んだのは1968年頃で、流し撮りの入門書や自然体で撮影する教示などは皆無の時代だった。
次の写真が横浜市電の単車をモチーフに流し撮りした一コマ。被写体の見極めが甘かったことと、流し撮りを意識して力んでカメラを回転させたことなどが相乗して、習作とはいえ、稚拙な結果だった。
動きを掴みやすい中望遠レンズ
フレーミング中の路面電車の大きさを同一とした場合、レンズの焦点距離が長いほど見かけ上の電車の動きが遅くなるから、広角レンズより標準レンズ、標準レンズより中望遠レンズの方が路面電車の動きが掴み易くなる。
次の写真は、旧JR富山港線をLRT化した「富山ライトレール(現・富山地方鉄道)」岩瀬浜行きのLRV(ライト・レール・ビークル)を被写体にして、デジタルカメラに装填したズームレンズを70mmにセット。フレーミングの中で先頭部運転台辺りの動きを見極め、カメラを構えた体を軽く回転させて流し撮りした。電車の速度が高かったために、1/60秒のシャッター速度でもかなりの走行感が描写できた。
晴天に恵まれた富山ライトレールの開業初日は溢れんばかりの乗客が押し寄せ、各電車は満員の盛況だった。家並の背景には冠雪した立山連峰が写っている。