人気野球漫画『ドカベン』や『あぶさん』などで知られる漫画家の水島新司さんが1月10日、肺炎のため都内の病院で亡くなったことがわかった。82歳だった。
水島さんは18歳で漫画家人生をスタート。「明訓高校」の野球部を舞台に、山田太郎などが甲子園で活躍する『ドカベン』やプロ野球「南海ホークス」で酒豪の代打男、景浦安武がパ・リーグで勝負強いバッティングをする『あぶさん』など次々とヒット作品を送りだした。
「水島さんの作品作りは、現場が欠かせなかったと思います。本当によく球場に足を運んでおられました」
こう話すのは、南海ホークス、阪神タイガース時代から水島さんと交友があった野球評論家の江本孟紀さん。
江本さんが南海のエースだった時代、水島さんは『あぶさん』を「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載し、人気を博していた。
水島さんは当時、南海の4番でキャッチャー、監督の野村克也氏(故人)と親しく、『あぶさん』も南海の選手という舞台設定だったので、よくホームグラウンドの大阪球場に来ていたという。
「当時、私は大阪球場近くのミナミの飲み屋でよう遊んでいました。するとあちこちで『江本さん、漫画では大酒飲みになってまっせ』と笑われるんです。私、酒が全然、飲めないのに…。よくよく聞くとあぶさんで私が登場し、大酒を飲んでいるシーンが出ていたそうです。ある時、大阪球場で水島先生とお会いした時、『私は酒が飲めませんねん、1滴も』と言うと、驚かれていた。それ以来、『あぶさん』で私が酒を飲むシーンはなくなりました」
こう振り返る江本さん。水島さんが『あぶさん』の主題歌をレコード化するときにも、江本さんにご指名があり、自慢のノドで収録した。
南海から阪神に移籍してからも、水島さんはよく甲子園球場を訪ねてきたという。
「あるとき、水島先生がグラブの親指と人差し指のところにある小さなスペースのところに、即興で私の似顔絵を描いてくれました。それが気に入って、しばらくはずっとそのグラブを使っていました」