参加者の話で目立ったのが、「記念日や連休がつらい」「思い出の場所に行くのが耐えられない」「友人や周囲の言葉に傷ついた」というものだった。

 一般的に考えれば、記念日や連休はうれしい日であり、思い出の場所は大切な空間であり、友人は自分を支えてくれる存在、のはずである。

 だが、遺族の心情はそうはならない。外来でも同様の相談が多いという。

 大西氏が解説する。

「例えば命日や結婚記念日が近づくと、亡くなった人を思い出して感情が大きく揺さぶられ、非常につらい状態になります。これを『記念日反応』と呼びますが、特に年末年始はつらさが増す傾向があります。記念日反応は日にちに限らず、さまざまな情景に接することでも現れます。買い物中に、ある楽しそうな家族連れを見て物陰に隠れてしまった女性。夫婦でよく利用したスーパーに行けなくなったり、2人でよく利用した駅で降りることができなくなってしまった人もいます。自分の意志でそうしているのではなく、身体が勝手に反応してしまうのです」

 遺族外来の患者で、埼玉医科大で亡くなった人の遺族は極めて少ないという。勝手知ったる病院のはずだが、

「特にがんで亡くなった方の遺族は、がんの告知のシーンや、亡くなるまでのさまざまな光景を鮮明に覚えているケースが多いです。この病院に来ると、当時と同じ光景、同じ呼び出し機を手にしますので、亡くなった人を思い出してつらくなってしまう。病院の前の道路を通ることすら避けたいという方もいます」(石田氏)

 友人や周囲の声かけやアドバイスも、逆効果になることが多いという。

「しっかりしなきゃ」「元気そうだね」「いつまでもくよくよしないで」「もっと大変な人がいるんだから」などが、遺族の多くが苦痛に感じた言葉だ。

「『役に立たない援助』と呼ばれるものです。友人たちは何か言ってあげなきゃと一生懸命なのですが、当事者の心情を推し量れないため、どうしても傷つけがちになってしまう。悲しみに浸りたい遺族に『しっかりしなきゃ』はつらすぎますし、無理に元気を装っているだけなのに、『元気そうだね』と言われるのはきつい。外来に通い良くなりつつある患者さんが、たったひと言が原因でもとの状態に戻ってしまうことも少なくありません」(大西氏)

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