ボラ(出典:WEB魚図鑑)
ボラ(出典:WEB魚図鑑)

 年が明けて半月がたちました。4月からの新しい事業年度へ向けて、さまざまな会社の社長交代のニュースがメディアを賑わせる時期になりました。

【写真】コノシロはこんな魚!

 社長といえば、かつては出世レースの最終勝利者に位置付けられていました。ただ最近は、がむしゃらに出世を目指すのではなく、趣味や家庭生活などとのバランスを重視するという若手社員の方が多いようです。

 皆さんご存じの通り、魚の中にも「出世魚」と呼ばれる魚がいます。まず、皆さんが思い浮かべる魚は何でしょうか?

 一般的には、「ブリ」「スズキ」「ボラ」を出世魚御三家ということが多いようです。

「ブリ」と「スズキ」は、最も大きくなった成魚の呼び名が、その魚の名称となっています。一方、「ボラ」については、最も大きく育ったものは「トド」と呼ばれています。「とどのつまり」という言葉は、この呼び名が由来となっているんです。

 実は、ボラの呼び名が由来となった言葉は他にもいくつかあります。

 例えば、主に関西で、初々しくて青っぽいことを「おぼこい」というがあります。これは3~20センチ程度のボラの幼魚の呼び名「オボコ」が語源と言われています。

 また、最近はあまり聞きませんが、昭和の時代には、「ちょっと粋な」という意味で「いなせな」という言葉がありました。

 サザンオールスターズの1998年のヒット曲にも「いなせなロコモーション」という曲がありましたよね。これは「オボコ」と「ボラ」の間の、20~30センチ程度の若い魚の呼び名「イナ」に由来しています。

 このように、ボラに由来する慣用句が多いのは、かつてはボラが非常に身近な魚だったことの表れです。

 江戸時代にはボラは、タイやスズキなどと並ぶ人気の魚で、江戸川や隅田川の河口付近でもよく取られて、食べられていたようです。

 最近は水質が悪くなって、都市部の河口付近のボラは「臭いが嫌」ということで嫌われもののようですが……。

 一般的に出世魚と呼ばれる魚は、大きくなるほど脂も乗って美味しくなり、値段も高くなります。逆に、小さい方が人気があって値段も高い出世魚もいるんです。出世すればするほど価値が落ちるって、ちょっとかわいそうな気もしますよね。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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「逆出世魚」の正体は?