今やSNSやネット動画が新たなスターを生むことは珍しくなくなった。そんななかでも今年、注目なのがあたらよだ。
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ネットを中心に若者の支持を集め、一気にブレークしたバンドだ。結成は2019年。ひとみ(ボーカル・22)、まーしー(ギター・22)、たけお(ベース・22)、たなぱい(ドラム・24)は音楽専門学校の同級生。
20年11月、YouTubeに恋人との別れの痛みを歌った「10月無口な君を忘れる」のミュージックビデオを投稿。評判が評判を呼び、今や再生数は3千万回を超えた(22年1月12日現在)。同曲のコメント欄には、視聴者たちが吐き出したつらい恋愛話がずらりと並ぶ。サブスクやSNSの各チャートでは軒並み1位を記録した。反響の大きさにひとみは驚いたという。
「1万回再生ですら、みんなLINEで大盛り上がりだったくらいです(笑)。YouTubeにただ上げるだけでは伸びないと考えて、事前に他のSNSも利用して告知をしましたが、それでもこの数字はまったく想像していませんでした」
ひとみの恋愛体験がベースにある同曲は、あたらよ結成のきっかけでもある。
「バンド結成前に恋愛でボロ泣きすることがあって、その悲しみを吐き出して書いた曲なんです。ほぼ記憶がないくらいに没頭して、30分くらいでできた。なんならその相手にも聞かせてやれというくらいの気持ちでSNSに上げたら、メンバーがそれを聞いていて、声をかけられてバンドがスタートしたんです」
結成から2年足らずでバンドは広く知れ渡った。当初は実感がついてこなかったとメンバーは口をそろえるが、それはコロナ禍も関係している。
「結成してからライブを一度もできていなかったんです。数字ばかりがどんどん伸びていくけど、実際にファンの方を目の前にしたことが一度もなかった。昨年9月にようやくライブができて、初めて実感がわきました」
あたらよが目指すのは「後ろでも横でもなく、空気のようにいつもそばにいて、聞き手に寄り添う曲を届けるバンド」。3月には、初のフルアルバム「極夜において月は語らず」の発売が予定される。
バンド名は「明けるのが惜しいほど美しい夜」という意味の可惜夜(あたらよ)から。
「そんな夜に曲を聞いてほしい、そして演奏が終わってしまうのが惜しいと思ってもらえるようなバンドになりたい、という二つの思いを込めています。今年は直接ファンと触れ合えるライブをもっとやりたい」
(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2022年1月28日号