太田サトル
2部構成の1部は、国際フォーラムの巨大なスクリーンに映し出される「ルパン三世 カリオストロの城」の上映。劇中のセリフや効果音をそのままに、音楽部分を総勢50人を超える大編成の大野雄二オーケストラがその場で生演奏する。
この演奏について、「なんてことを引き受けちゃったんだってくらい、音をリアルタイムに合わせるのはとても難しい」と大野さんは語る。
「たとえば、ルパンがビョーーンとジャンプして着地する。崖を登ったりズリ落ちたりする。当時、僕たちは、その絵を見ながら、そこに合わせて音楽をつけてきたわけなんだけど、そのタイミングは、譜面上でワンツースリーフォーできっちり尺に合わせられるものとはまた違うんだ。その微妙な、譜面に書けないようなタイミングを、今回は生演奏で合わせなきゃならない。それも50人以上の大人数でね」
2部は「犬神家の一族」や「人間の証明」「スペースコブラ」など、大野さんの代表作も交えた構成となる。
「今回久々にやる曲や初めてライブで披露する曲も多いけど、2部はリハーサルもほとんどやらない予定」と言う。
「いつも僕たちは、練習をそろってやらずに、それぞれで事前にやるスタイルなんだ。ちゃんと練習できていれば、一回やったら当然合うはず。合わなかったらもう一回、その2回で十分。極端に言えば、当日の練習だけでもいいぐらいかもしれない（笑）」
そこは、演奏中にどんどん曲が生き物のように変化していく、ジャズミュージシャンならではの感覚だろうか。
「それはあるかもしれないね。とはいえ一生懸命やっていても、間違えることもある。だって人間だもの（笑）。ただ、そこも含めて音楽のおもしろいところだと思うんだ。当たり前だけど演奏はその瞬間ごとの音だから、2日間とも、違うものになると思うよ。そういうライブ感も込みでルパンの世界を楽しんでもらえたらうれしいね」
生演奏で体験できるルパンの冒険の世界。これ以上ないぜいたくな体験だ。（本誌・太田サトル）
※週刊朝日 2022年1月28日号
沖昌之
ラリー遠田
石井志昂
