「日本では格差に対するあきらめの広がりが指摘される中、平等を優先してきたフィンランドはひとつのモデルになる」(同)

 30年以上、フィンランドで暮らす通訳の下村有子さんはこう話す。

「子どもたちが多様化し、クラス運営が難しいケースが増えているなど、教育面で課題がないわけではない。けれど、多くの人が国を信頼している」

(AERA2022年8月8日号より)
(AERA2022年8月8日号より)

■「ミソジニー」ある

「国への信頼感がある」。今回の取材でよく耳にした言葉だ。そう言えるのは、ジェンダー平等で世界2位、達成率86.0%(22年)であることも一因だろう。

 一方の日本は116位で達成率65.0%(同)。こうした調査結果を受けて毎回暗い報道ばかりが目につくのとは対照的だ。

 マリン首相はフィンランドという国の象徴なのか。約20年前から、フィンランド南西部でフィールドワークを続ける千葉大学の高橋絵里香准教授(文化人類学)はこう言う。

「トップダウンで政策を実行していく、ある意味で、フィンランドらしい政治家です。それなのに、批判される時は『話を聞かない』と言われる。男性であれば政治家として望ましい資質とされてきたのに。政治の場にまだミソジニー(女性嫌悪)が残っているのです」

フィンランドにも、まだミソジニーがある。それは、理想郷にまだまだ伸びしろがあるということかもしれない。(編集部・古田真梨子)

AERA 2022年8月8日号より抜粋

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