世界各国の15歳を対象とする学習到達度調査「PISA」。前回、2022年の調査では、日本は科学的リテラシー2位、読解力3位などと好成績でした。一方、2000年代初頭の調査で首位にいたフィンランドは近年、順位が低迷しています。その理由と、フィンランドの教育の現状や日本が参考にするべき点について、同国の教育制度に詳しい津田塾大学学芸学部国際関係学科の渡邊あや教授に聞きました。
【写真】授業中に見えない!?リラックスしながら授業を受けるフィンランドの子どもたちはこちら(ほか全4枚)フィンランドで「塾通い」する子はほとんどいない
――現在、フィンランドの小学校ではどのような授業が行われていますか。
授業では、子どもたちが主体的に学ぶことが重視されています。日本で言うところの「総合的な学習(探究)の時間」のような取り組みも行われています。その効果については議論がありますが、学習に前向きではない子も巻き込めるとして、現場の先生方の間でも歓迎する向きが多いように感じます。
例えば、フィンランドで広く取り組まれている実践として、劇やミュージカル作りがあります。子どもたちは、自ら演じたり、音楽を演奏したり、衣装やセット、小道具、宣伝のためのコマーシャルフィルムなどを制作したりするなどして、劇やミュージカル制作に関わります。指導に当たっている先生も「子どもたち一人ひとりに、適切なチャレンジを与えてあげることができる」と話していました。このような活動を通して、学校や学習に対して前向きな気持ちを持つことが、「学び続けたい」という気持ちにつながると期待されています。
――日本のように中学受験や高校受験はありますか。
高校進学の際、「試験」という形ではありませんが、入学者選抜があります。選考の基準となるのは、学校での成績です。普通高校の場合、主要教科の成績(評定平均値)と書類などにより選考されます。欧米諸国では、高校進学において入学者選抜がないところも多い中で、珍しいかもしれません。生徒たちは、希望する高校において要求される評点(評定平均値)を目安に、志望校を決めます。とはいえ、日本のような受験勉強をすることはありませんし、塾通いもまれです。
次のページへPISA低迷後の教育現場での変化