「ようやく心身ともに落ち着いて国のために尽くすことが出来る。良い出発となったことへの感謝と、皇后陛下の自己認識が投影されています。和歌でお使いになった『望む』という表現は、単に見るという意味ではない。『しげしげと見渡す』といった実感をともなった言葉です」
結句は「大樹のみどり」と体言止めにした。それによっていっそう、瑞々しさが広がっている話す。
18日、歌会始の儀が終わると、召人や選者など関係者だけで小さな懇談の場が設けられた。
篠さんは他の歌人に、両陛下の今年の和歌は、特に良かったと発言していた。
この日の諸行事が終わったあと、侍従がそばに来た。手には、両陛下からのお言葉を記した紙が見える。
侍従は、書かれた文章を読み上げた。
「褒めていただいて嬉しかった」
記されていたのは、両陛下の素直なお気持ちだ。
「今上陛下として、和歌を詠進なさることに、すこしご緊張もあるのかもしれません。和歌の指南役や儀式に集う歌人から、今上天皇に相応しい一首として評価されたことを心から喜んでおられたのでしょう」
ざっくばらんで人間味あふれるお人柄。それが令和皇室の魅力なのかもしれない。(AERAdot.編集部 永井貴子)