『死びとの恋わずらい』/黒服の「四つ辻の美少年」に熱狂する少女たちに起こる悲劇とは──。(c)JI Inc./Asahi Shimbun Publications Inc.
『死びとの恋わずらい』/黒服の「四つ辻の美少年」に熱狂する少女たちに起こる悲劇とは──。(c)JI Inc./Asahi Shimbun Publications Inc.
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 ホラー漫画家・伊藤潤二さんが4回目、2年連続となるアイズナー賞を受賞した。「最優秀アジア作品賞」に輝いたのは、日本でも人気の高い『死びとの恋わずらい』だ。AERA 2022年8月8日号の記事を紹介する。

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「また賞をいただけるなんて、驚きでいっぱいです。『死びとの恋わずらい』は私にとっても非常に思い入れのある作品。素敵な翻訳と装丁をしてくださった海外の出版元VIZメディアさんに感謝しております」

 と、伊藤さんは喜びを語る。

 アイズナー賞は「漫画界のアカデミー賞」と呼ばれる権威ある賞。前年にアメリカで刊行されたコミックが対象となる。伊藤さんは2019年にメアリー・シェリー原作の『フランケンシュタイン』で「最優秀コミカライズ作品賞」を、21年に『地獄星レミナ』で「最優秀アジア作品賞」を、『伊藤潤二短編集 BEST OF BEST』で「Best Writer/Artist部門」をW受賞している。すでに殿堂入りしている手塚治虫さんの5回受賞、大友克洋さんの4回受賞に並ぶ快挙だ。

『死びとの恋わずらい』は、四つ辻で出会った人に運命を占ってもらう「辻占」が流行する霧深い町が舞台。少女たちは黒服の美少年「四つ辻の美少年」に遭遇して言葉をもらうことを切望するが、彼に出会った少女たちは次々に凄惨な死を遂げる。

「ある本に『辻占』という言葉が出てきたんです。昔、人の顔がはっきりしないような夕暮れ時に、辻を通る人の会話を聞いて占いをする風習があったと。『万葉集』にも登場するそうで、面白いなと思い、自分なりにアレンジしました」

『死びとの恋わずらい』/美男美女が多い伊藤作品のなかでも、この美少年は際立ったキャラクター。英文字のセリフもハマっている。(c)JI Inc./Asahi Shimbun Publications Inc.
『死びとの恋わずらい』/美男美女が多い伊藤作品のなかでも、この美少年は際立ったキャラクター。英文字のセリフもハマっている。(c)JI Inc./Asahi Shimbun Publications Inc.

■死を呼ぶ美少年

 黒服の美少年と、その謎を追う主人公・龍介の関係には、自身がもっとも恐怖を感じるというドッペルゲンガーのテーマも取り入れられている。なんといっても少女たちに「死ぬほど好き~!!」と熱狂されても冷酷な言葉であしらうクールな黒服の美少年のキャラが強烈だ。

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