「東日本大震災では、震源が三陸沖であったにもかかわらず、東京都江戸川区の旧中川は堤防段差が70メートル、延長300メートルにわたって破壊されました。そのほか、全国で3475カ所の堤防が破壊されています。千葉県浦安市や江戸川区では液状化被害も多発し、生活インフラに大きな影響を与えました」
大都市に脆弱(ぜいじゃく)な堤防が多いのは、歴史的な理由がある。土屋氏が続ける。
「土で造られた堤防は耐用年数が長く、千年を超える堤防は日本国内でたくさんあります。一方、戦後の高度経済成長期に急いで造られた堤防はコンクリートやブロック製で、寿命は50年程度。堤防の厚みが薄く、災害時に壊れやすい『カミソリ堤防』です。地震の影響で壊れた堤防から洪水が起きれば、首都圏に大きな被害をもたらします」
特に怖いのが、台風シーズンに巨大地震が発生した場合だ。
堤防が広範囲にわたって崩壊した場合、修復に数週間かかる可能性もある。修復中に豪雨が襲えば、被害はさらに拡大する。土屋氏は言う。
「阪神・淡路大震災の際、淀川の堤防は約2千メートル破壊され、本格復旧まで約1年かかりました。台風と高潮が重なって潮位が上がった海水が、河口を逆流して東京に浸入した場合、東京の東側にあるゼロメートル地帯はすべて浸水してしまいかねません。堤防が決壊すれば、10メートル級の破壊力を持つ津波が襲います」
(本誌・西岡千史)
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※週刊朝日 2022年2月4日号より抜粋