869年に日本海溝沖で発生した「貞観地震」については、2011年3月に東日本大震災が発生する以前に、大きな津波が来たことを宍倉氏らの調査チームは発見していた。そのため、東日本大震災以降、過去の巨大地震を調査する動きが増え、今回の房総半島沖での未知の震源地の発見につながった。
今回の産総研らの調査では、約300年前に発生した巨大津波の痕跡も発見されている。
実は、房総半島の北端に位置する千葉県銚子市でも、同様の調査結果が出ているという。東北学院大や東北大の調査によると、銚子市では沿岸の一部で津波の高さが約17メートルに達していた。波が陸をかけあがる「遡上(そじょう)高」は20メートルに達した可能性があると分析している。
こういった研究成果が次々と出てきたことで、茨城県東海村の日本原子力発電・東海第二原発が対応に追われている。東海第二原発は、房総半島を北上した茨城県沿岸に位置するが、東日本大震災のときには5.4メートルの津波が襲い、6.1メートルの高さの防潮壁を危うく超えそうになった。
11年以降、15メートルの津波にも耐えられるように防潮壁を強化したため、房総半島沖の巨大津波について、原子力規制委員会は「施設の安全機能に影響を及ぼさない」との判断を下した。だが、「引き続き、研究動向に注視し、情報収集を行う」(同)との見解も示している。
房総半島沖の巨大地震に、どう対応すればいいのか。前出の宍倉氏はこう話す。
「房総半島沖の津波は、数百年に一度のペースで発生しており、前回からすでに300年以上が経過しています。津波が発生した場合、どのような影響を与えるのかについて、具体的にシミュレーションし、警戒する段階に入っています」
房総半島沖が震源でも、東京の都心部に致命的な打撃を与える可能性もある。地震による堤防破壊で洪水が起こる「地震洪水」だ。水害対策に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行・技術審議役は、こう警告する。