団体では20年9月、学内関連の性暴力の実態を可視化するためネットを通じ学生や院生らに性暴力に関するアンケートを実施。325件の回答があったが、性暴力への認識を問うた設問では「盗撮」や「セクハラ」「レイプ」でさえ性暴力ではないと認識しているとの答えがあった。
「ショッキングでした。性暴力に遭った時に相談できる学生相談室などの存在を知らない人も半数近くいました。性暴力について学ぶ機会がなく、大学から情報提供が少ないのが原因だと思います」(佐保田さん)
性被害や性暴力をなくすにはどうすればいいか。佐保田さんたちが注目するのが、第三者が介入する「アクティブバイスタンダー」の役割だ。バイスタンダーは「第三者」を意味し、アクティブバイスタンダーは「行動する第三者」のこと。具体的には、性暴力などの現場に居合わせた時、加害者の注意をそらす、周囲に助けを求める、録画して証拠を残す、事後に「大丈夫?」と声掛けをする。
メンバーの一人で、総合政策学部2年の中村彩夏(さやか)さんは言う。
「アメリカでは、大学で第三者介入を含む性暴力防止プログラムの実施が定められ、その成果が報告されているところもあります。行動に移すのはハードルが高いですが、電車で痴漢を発見したら大音量で音楽を流したり、飲み会でセクハラがあればわざとお酒をこぼして注意をそらすようなことでも大丈夫です」
■包括的な仕組みが大事
昨年末、団体はアクティブバイスタンダーの認知度を上げるためクラウドファンディングで資金を募りピンバッジを500個つくった。大学関係者やワークショップの参加者に配布していく。中村さんは期待する。
「バッジなら『私は性暴力を許さない』ということを負担なく表明することができ、被害者も助けを求めやすくなります」
団体では今、大学自治会と協力し、性暴力への取り組みの提出を義務付けるルールづくりなどを進めている。
前出の佐保田さんは、
「啓発活動だけでは届く人にしか届きません。性暴力をなくすには、包括的な仕組みづくりが大事だと思っています」
と強調し、中村さんも言う。
「誰もが安心して学生生活を送れることは大切です。そのためにはまず、性暴力の実態に関する正しい認識や性的同意の概念を広めていく必要があると思います。時間はかかると思いますが、継続して活動していきたいです」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年1月31日号より抜粋
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