■「女だから正論言える」

 第6波がやってきた以上、やはり気になるのは今後の対策だ。

「オミクロンは上気道で増えやすく、ウイルスの増殖速度も速いので感染力も強い。だから急激に感染者が増える。軽症化して重症化率が下がっても感染者数が増大すると重症になる人も増えて、医療が逼迫する可能性があります。病欠者によるエッセンシャルワーカーの事業継続への悪影響も心配です。これがオミクロンの怖さです。検査を増やして確定診断をしないと薬が処方できません。治療のためにも検査の拡充が必要です。さらに中等症以上になったり、持病が悪化するなど、医療が必要となった人のためにも大規模施設での集約医療の準備が急がれます。限られた医療者でも目が届くような状況で患者さんを診ることができる施設を作っておきたい。第二に、軽症といっても発熱や咳で苦しむ人もいます。やはり発熱外来のようなものを作り、血算や血液検査でエビデンスを取り、医師の診断を受けるシステムを入り口に作ることが大事です。抗ウイルス薬を早期検査、確定診断で必要な患者さんに速やかに投与できるようにする。薬の確保も大事ですが」

 本著の中には<君はね、女だから正論言えるのね>と尾身茂氏に言われる場面が登場する。

「言われた日の夜、弁護士の親友にLINEしました。彼に『それがコロナ問題の本質だね』『では男の発言は正論ではなく、保身からの発言なんですね、これからはそう聞くようにしますって言い返せ』って言われてハッとし、コロナ問題の政策決定の本質はこれなのかもと認識しました。でも男性でも正論をいう人はたくさんいます。今回はそれができない人が国の専門家の中枢にいたのかもしれない。誰しも非難されるのはつらいと思いますが、“公”のポジションについた人は“私”を捨て“公”をとらなければいけない時があります。その覚悟を持てないなら辞めてください。国民の健康と経済に直結するのが感染症対策なのだから。本書では、そこまで書きました。ただ、それは個人への非難ではなくて、日本社会そのものに潜む問題じゃないかと思うんです」

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2022年1月31日号