――鑑賞者の倫理観を問う本作に対し、思うこととは。

片山:正しいこととは何かをそれぞれがどう判断するか、正しいことは誰が決めているのか。それぞれの言い分が複雑に絡み合って、観終わった後、誰も間違ってなかったし誰も正解じゃなかったと思えるような映画にしたかった。

佐藤:人が階段を転げ落ちていく話にも思えるし、何かを発見した話にも思える。いろいろな見方ができるということ、イコールいい映画なんだと思います。

清水:登場人物全員に対し、何かが少しでも違えばこうなってなかったんだろうなと思える。観ている間も面白いんですけど、観終わった後の考える時間がすごく素敵だなって思える映画です。

片山:業界全体のことも考え、何が足りてないかを、作品をもって証明したい。作品がヒットすれば、映画作りの考えも変わるだろうし。僕にとって、そういうチャレンジでもありました。

佐藤:片山が「岬の兄妹」を自腹で撮って、それが「さがす」につながって、座組みも含めて理解してくれるプロデューサー陣がいて、いい俳優が集まった。こういう作品は評価されてほしいし、ヒットもしてほしい。52歳になると、これからの日本映画界のことを考えるんですよ。批判も含めてさまざまな意見が出ると思いますが、こういう映画がヒットすることは、すごくいいことだと思います。

(構成/ライター・小松香里)

AERA 2022年1月31日号