佐藤:清水くんが弁当をすごい勢いで食べるシーンがあるんだけど、山内の血に飢えている感じが出ていて、見事だった。清水くんもそうだけど、出てる俳優がみんないい。16歳の伊東蒼ちゃんも怪物級だし、森田(望智)さんもそう。それは俳優の腕もあるけど、片山がそういう演出をしているということ。

――本作はコロナ禍での撮影中断を挟むも、大作並みの4カ月という撮影期間が設けられた。

佐藤:そんな予算はない作品なんです。でも、片山はどうしてもそれくらいの期間で撮りたかった。だから、各所の理解を得て、スタッフさんを極力少なくした。美しい話だと思いました。さらに1回でオッケーが出るような泣き叫ぶシーンも何回もやるんですよ。片山に「今回の現場で初めての経験がたくさんできている」という感謝の気持ちを伝えながらも、「同じシーンをそんなに何回もやったら、役者はどうにかなっちゃうから」って言ったら、「大丈夫です。5回までしかやりませんから」って。「5回もやるのか!」と思っていたら、本当に5回やるので死ぬかと思いました。僕は自分が監督をやる時、俳優の気持ちもわかるので、気を使いすぎちゃうところがある。でも、それは誰のためにもならなくて、作品をよくするためにテイクを重ねることは大切だと学べたし、役者としても監督としても本当にいい経験ができた。このやり方を貫いた片山の意志の強さとプロデューサー陣の懐の深さは素晴らしいです。

片山:1シーンにかける時間が長く取れると、起こり得る状況をみっちり考えられて、見飽きさせないものにできる。撮りなれてない新人監督が、短期間で悩む時間もなく、流れ作業のようにシーンを撮っていかざるを得ない現場をずっと見てきたので、どう変えていけるか考えました。スタッフも少なく、迷惑をかけたなと思います。

■いろいろな見方できる

佐藤:でも、その座組みを作ったのはすごくいいと思う。撮影期間が長いということは、1日に撮るシーンは長くないので、ちゃんと寝れるんです。

清水:1シーンを何テイクも撮る中で、いろんなバリエーションをやって良いものを求めていきましたよね。芝居のことをじっくり考えていただけるのは、役者として本望だと思いました。

佐藤:清水君ちょっと待って! 何その優等生発言! そのコメント、俺のにしてください。

清水:(笑)。

佐藤:あなたもちょっとは頭きたことあったでしょ?

清水:「寒いな」とかはありましたけど(笑)。

片山・佐藤:(笑)。

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