林:そうなんですね。
森永:国は、実質賃金が年率1.6%で上がっていくと言うけど、実際は1997年からずっと下がり続けています。しかも、さっき言った年金の試算では、男性高齢者の半数が75歳まで働く想定になっていますが、いま日本人男性の健康寿命は72歳なんです。
林:72歳って、うちの夫と同じじゃないですか。
森永:「75歳まで働け」ってことは、「介護施設から通勤しろ」と言ってるのと同じですからね。
林:森永さんの最新刊『長生き地獄』では、「夫婦二人の公的年金が13万円の時代になる」とおっしゃってますね。
森永:私の試算では、夫と専業主婦の世帯で、30年後の受給額は月額13万円。年収で言うと150万円ぐらいですね。平均寿命は年々延びていて、老後は20年、30年と長くなっていくので、貯金だけでまかなうことは不可能です。死ぬまで働くか、月13万円で暮らせるように家計を構造改革するか、どちらかを選ばないといけません。
林:自宅があって、企業年金があればなんとかなりますか。
森永:いま、高齢夫婦だけの世帯で平均26万円の支出があるんです。それを十分まかなえる年金がある人は問題ありませんが、そうじゃない世帯はどうやったら月13万円で暮らせるのかを考えなくてはいけない。それで私、コロナ禍に入ってからの2年間、たった一人の社会実験をしたんです。
林:それでお野菜もつくったりしたんですね。
森永:そうです。わが家は30年前の家だからローンもないし、自分で野菜や果物をつくって暮らせば、十分暮らせます。畑をやって、おもちゃを買うのと外食をやめたら、家計は13万円以内に余裕で収まることがわかりました。
林:そうはいっても、屋根や外壁を修理するとか、メンテナンスにお金がかかりませんか。うちもそうですけど、建てて20年もたつと、すごくお金がかかるんですよ。
森永:リフォームはしましたが、そのときに長持ちする材料を選んだので、自分の老後にはもうやらなくていいかなと思っています。