その後、義時のひ孫に当たる第5代執権の北条時頼がその水で銭を洗って一族の繁栄を願ったことにならって参拝する人々も同じように銭を洗うようになり、やがてそれが、「洗ったお金は倍になって戻ってくる」という民間信仰につながったらしい。
お参りに際しては、岩窟のトンネルと鳥居が並ぶ参道をくぐった先にある社務所で有料のろうそくと線香を譲り受け、お金を洗うのに使うザルを借り、奥宮から本社、上之水神、下之水神、七福神社などに詣でた後、再び奥宮に戻る。そこで、紙幣や硬貨をザルに入れ、銭洗水を柄杓ですくってかけながら洗う。
紙幣を洗うときはびしょびしょに濡らすのではなく、隅を湿らせる程度でいいという。
同神社では「洗い清めたお金は世に出すことが重要なので、お守り代わりにしまい込むのでなく、感謝をもって有意義に使ってほしい」と助言する。
同市佐助の佐助稲荷神社も、頼朝とゆかりが深い。平治の乱に敗れ後白河上皇に伊豆へと流された頼朝の夢に、「かくれ里の稲荷」を名乗る翁が現れ、平家討伐の挙兵を促した。
夢のお告げに従い平家を倒した頼朝は、感謝の印に部下に命じてかくれ里の祠を探し出し、神社を再建したという。頼朝は配流される前の官位「従五位下・右兵衛権佐」から「佐殿(すけどの)」と呼ばれており、「佐殿を助けた稲荷」の意から「佐助稲荷」と命名されたという。
頼朝は平家打倒後に鎌倉幕府を興して征夷大将軍に就任したことから、同神社は「出世稲荷」の異名を取り、仕事や商売の運気を上げるパワースポットとして知られる。近年はペットや飼い主に寄り添う神社としても人気があり、犬や猫の絵馬やお守りが充実している。なお、「鎌倉殿の13人」放送に当たり、22年は特別な御朱印を出している。
◆義時ゆかりの覚園寺薬師堂
稲荷神社とあって、参道には神域への入り口を示す赤い鳥居がずらりと並ぶ。歴史を刻む石の祠が多数ある境内の片隅からは「霊狐の神水」と呼ばれる神聖な湧き水が出ており、ペットボトルなどに入れて持ち帰ることもできる(飲水は不可)。