同神社の丹下昭憲さんが勧めるのは、神狐(陶器製の白狐像)の奉納だ。境内の各所には善男善女が願を掛けた白狐像がひしめき、幻想的な雰囲気を醸し出している。
「鎌倉殿の13人」の主人公・義時との関わりが深いのが、同市二階堂にある真言宗泉涌寺派の覚園寺(かくおんじ)。同寺の前身は、薬師如来を信仰する義時が建立した大倉薬師堂だ。お堂には当時、鎌倉時代の大物仏師・運慶の手になる十二神将像が安置されていたとされ、そのうちの一体、戌神像には義時の命を救ったという逸話も残る。
幕府の第3代将軍・源実朝が右大臣に任命され、鶴岡八幡宮でその拝賀式が執り行われたときのことだ。実朝の列に加わっていた義時は、楼門近くにいた白い犬を見て急に気分が悪くなり、源仲章に代理を頼んで屋敷に戻った。
その後、実朝は甥の公暁に暗殺され、仲章も命を奪われてしまう。実は、この白い犬は戌神像の化身で、義時に命の危険を知らせるために姿を現したというのだ(諸説がある)。
その後の1296年、第9代執権・北条貞時が元寇の再来がないよう祈願し、大倉薬師堂を正式な寺院・覚園寺に改めたとされる。義時が建てた大倉薬師堂は火事で焼失し、現存する薬師堂は1354年に再建された建物に修繕を重ねたもの。
同寺住職の仲田順昌さんは、「荘厳なたたずまいで古都・鎌倉の面影を残し、義時公ゆかりの仏様もまつられている。参拝してその雰囲気を感じてほしい」と話す。
今年は、「鎌倉殿の13人」にちなんだ特別御朱印も配布している。ご本尊である薬師如来のお守りや、自分で祈願する内容を書いて巾着袋に入れて持ち歩く「道」お守り、薬師十二神将の守護札など授与品も、ご利益がありそうだ。(ライター・森田聡子)
※週刊朝日 2022年2月4日号