(週刊朝日2022年2月11日号より)
(週刊朝日2022年2月11日号より)

 小選挙区制になったために、とくに自民党は議員の多くが党執行部の“イエスマン”になっちゃった。公認するかどうかは執行部に権限があるから、誰も「ノー」と言えなくなった。それまでの中選挙区制では、派閥の存在が大きく、派閥が執行部に平気で「ノー」と言えた。

 なぜ当時、選挙制度改正が必要だと思ったか。

 実は中曽根康弘内閣で官房長官だった後藤田正晴に、2日間にわたって説得されたからなの。次のような理屈だった。

 中選挙区制は自民党の候補者同士の競争になりやすい。どうしても金がかかり、金権政治につながる。金権政治が続くと、時の実力者が独裁的になる。こうした政治は国民から大批判を受ける。だから、これを正すには選挙制度を改正すべきだ。つまり、各党の候補者同士の競争となる小選挙区制にすべきだ──と。

 そのとおりだと思った。僕は完全に説得されちゃった。

 それで宮沢首相と僕の対談をテレビの企画として提案し、宮沢ものってくれた。本来だったら官邸側がなかなか了承しないだろうけど、宮沢と僕はずっと前から仲良かったのね。

◆自衛隊と憲法の“大矛盾”ただす

 宮沢と僕、2人の全国紙編集幹部の計4人で3カ月に1回ほど、定期的に会食をしていた。こちら3人が金を毎回出して、宮沢が「たまには私にも出させてください」と申し出ても、「絶対にだめだ」と断ってね。宮沢に一銭も出させない会だった。首相になる前からやっていて、首相在任中の当時も、首相を辞めてからもやっていた。

 なぜ宮沢を囲む会をやったかと言えば、当時の自民党幹部のなかで金銭問題がなく、女性スキャンダルもまったくなかったから。

 そもそも、宮沢と非常に仲良くなったきっかけは古い。宮沢は自民党“頭脳派”の代表的な人物で、ハト派の政治家。彼と1971年秋に会った。こちらは無名のジャーナリストですよ。そして、「自衛隊と憲法はそれぞれ“大矛盾”。こんな大矛盾をして、とんでもない!」と問いただした。歴代の首相は辞めるべきだってね。

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