また市内10会場のほか、他地域の既存施設も最大限に活用する。帯広市ではスピードスケート、ニセコ地域(倶知安町、ニセコ町)でアルペンスキー、長野市でそり競技を計画する。
長野市の既存施設は、1998年長野五輪で使った「スパイラル」を活用する。ただ、この施設の年間維持費は補修を含めて2億2千万円。1億円は国の助成だったが、残りは長野市が負担し続け、18年で製氷をやめた。招致が決まれば大会までの維持費は札幌側の負担となる見込み。しかし、札幌市の概要案には言及されていない。
■市営住宅を選手村に
選手村は、更新時期を迎える月寒地区の市営住宅を集約して建て替える計画と連動させる。北海道開発局月寒庁舎が立つ国有地約3万平方メートルを選手村として活用する方向で、五輪後は市営住宅にする。
大会運営費は2300億円としていた従来試算を改め、2千億~2200億円とはじいた。国際オリンピック委員会(IOC)の負担金やスポンサー収入などでまかない、原則税金を投入しないとする。
その内訳は、IOCの負担金や最高位スポンサー収入が800億円、国内スポンサー収入を800億~1千億円とみる。このほか、運営費をまかなう総収入のうち、チケット販売や大会エンブレムの使用料収入は計400億円を見込む。
札幌市が概要案で示した大会のビジョンは、「札幌らしい持続可能なオリンピック・パラリンピック」だ。市は開催に向けた一連の取り組みを、今後のまちづくりと連動させ、人口減少や気候変動などの課題解決の突破口にしたい考えだ。
招致が成功すれば、パラリンピックは市で初めての開催となる。少子高齢化が進むなかで、高齢者や障害のある人などあらゆる市民が暮らしやすい「共生社会」の実現をめざす足がかりとなりそうだ。
秋元克広市長は「五輪が、市を100年後も輝き続ける持続可能な街にする礎になる」と力を込める。(朝日新聞北海道報道センター・佐藤亜季)
※AERA 2022年2月7日号より抜粋