オミクロン株の感染者拡大とともに増えている濃厚接触者。自宅待機になったことで、生活が苦しくなった人もいる。自己都合の欠勤扱いで補償がないケースがある。「オミクロン版自宅待機」を特集したAERA 2022年2月14日号から。
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オミクロン株の急速な蔓延で、感染が身近に迫っている。たとえ自分が感染しなくとも、濃厚接触者になり自宅待機となったことで、生活が苦しくなったという人も少なくない。
「休んだ分だけ給与から差し引かれます」
都内に住むシングルマザーの女性(31)は不安を口にする。
1月中旬、職場で隣の席の同僚が感染した。保健所から濃厚接触者になったとの連絡があり、自宅待機するよう言われた。女性は会社に有給休暇として扱ってほしいと頼んだが、自己都合の欠勤扱いで、休職中は無給で有給も使えないと告げられた。
新型コロナの感染や濃厚接触者になるのは会社の責任ではないとして、休業手当が出ないケースが多い。だが女性は言う。
「死活問題です。何らかの補償をしてほしいです」
インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長は、オミクロン株の特性を踏まえた濃厚接触者に対する合理的な仕組みができていないと指摘する。
「感染症対策の原理原則は、速やかな検査と的確な隔離です。しかし、いま国が進めているのは抗原検査による検査で、感度が悪いため当てになりません。まず国がやるべきことは、PCR検査をしっかり行い、隔離対象を決めていくことです」
その上で、オミクロン株の発症までの期間は3日程度と従来株より短いので、濃厚接触者の待機期間をエッセンシャルワーカーと同じ5日間にする。そしてその5日間は自宅待機を義務づけ、4、5日目に無料でPCR検査を行い、連続して「陰性」を確認すれば出勤していいという仕組みにするべきだと語る。
「濃厚接触者への自宅待機はあくまで保健所からのお願いですが、ほかの従業員の安全を確保するため休んでもらうわけですから、待機期間中であっても国が一定程度を補償する仕組みをつくるべきです」(倉持医師)
行政が把握しているよりもはるかに多い陽性者が市中にいると考えられる。政策研究大学院大学の土谷隆教授(統計数理学)も、社会活動を停滞させないためには、この事情を勘案した上で、濃厚接触者の検査や待機についての考え方を見直すなど、オミクロン株の特徴にあわせた機動的な対応が重要だと語る。
「重症化リスクが低いといっても、リスクは高齢になるほど上がります。例えば、高齢者が多くいる施設で働くエッセンシャルワーカーには毎日PCR検査をしてもらうという考えです」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年2月14日号より抜粋