■米戦闘機が墜落の事故
これに対抗する形で、中国軍は久しぶりに爆撃機1機、戦闘機34機、電子戦機2機、通信妨害機2機を合わせた39機の軍用機を台湾の南西方面や南シナ海北部上空に送り込んだ。
さらに24日、南シナ海でアメリカ海軍による示威行動が開始されると、中国軍は爆撃機2機、戦闘機10機、対潜哨戒機1機をバシー海峡方面の上空に送り込み、アメリカ艦隊の帰路を塞ぐ陣形を示した。
ところがその24日、初めて米空母カール・ビンソンに搭載された新鋭F-35Cステルス戦闘機が着艦に失敗し、海中に墜落するという事故が発生。アメリカ側にとっては対中示威行動どころではなくなり、機密の塊であるF-35Cの残骸を中国軍の監視網の中で引き揚げるという困難な作戦を実施しなければならなくなった。
そのため中国軍による台湾への威嚇飛行も通常に戻された。ただし、中国側は昨年10月にアメリカ海軍の攻撃原潜コネティカットが南シナ海で衝突事故を起こしたのに続き、今回の墜落事故が起きたのは、中国側を威嚇、挑発するために無理やり実力を伴わない海軍戦力を南シナ海に送り込んでいる証拠だと主張。南シナ海を危険と混乱に陥れる行為は控えるべきだという趣旨の批判を展開している。
このような昨年暮れから1月末までの米中の動きは、台湾危機を巡る今後の動きを示唆していると考えるべきだ。
■脅威を与えたのは米国
アメリカ当局は中国による台湾への軍事的威嚇や、南シナ海での軍事的拡張政策を牽制するため、今回の空母打撃群を始めとした海軍艦艇や爆撃機などを沖縄南方フィリピン海から南シナ海にかけて断続的に展開させている。しかし2カ月以上、中国軍機による台湾上空への接近は「威嚇」と言うには威力が弱く、定型的な偵察あるいは示威行動だった。
南シナ海でも同様に、中国軍による取り立てて目立った動きは見られなかった。つまり、アメリカ海軍が2セットもの空母打撃群をバシー海峡を通過させて南シナ海に送り込むほどの軍事的緊張は存在しなかったのだ。