「バレンタイン」の由来となった聖ウァレンティヌスは医療でも重要な人物だった(gettyimages)
「バレンタイン」の由来となった聖ウァレンティヌスは医療でも重要な人物だった(gettyimages)
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『戦国武将を診る』などの著書をもつ産婦人科医で日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授の早川智医師が、歴史上の偉人や出来事を独自の視点で分析。今回は、バレンタインの由来にもなった聖ウァレンティヌスについて「診断」する。

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 バレンタインデーに「本気の」チョコレートを貰ったのは、いつが最後だったかよく覚えていない。家人や患者さんに加えて進級判定や学位審査と重なることから、学生や院生、女性教室員から貰う「義理チョコ」は、医局に置いておくと腹を減らした学生たちも食べてくれて1~2週で綺麗になくなってしまう。バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は1970年代以降に日本で独自に広がったようだが、その起源はよくわからない。バレンタインに由来する聖ウァレンティヌス自体は実在の人物で、269年2月14日に殉教したことになっている。ローマ皇帝の命令に反して独身が原則だったローマ軍兵士の結婚を祝福したからとも、看守の召使の娘の盲目を奇跡で治したからともいわれているが、いずれも伝説の域である。没後200年たった496年頃に列聖され、さらに1000年たった15世紀のフランス語古文書に、聖バレンタインの日と恋人たちが関係付けられて登場する。

■てんかんの守護聖人

 聖ウァレンティヌスにはもう一つ、重要な役割がある。てんかん(癲癇)患者の守護聖人なのである。カトリックでは、様々な病気の患者を神とイエスにとりなす守護聖人がいる。歯を刑吏に抜かれて殉教した聖アポロニアが歯痛の聖人、乳房を斬られた聖アガサが乳がんを含む乳房疾患の聖人というように、たいていは何らかの関連付けがある。だが、聖ウァレンティヌスに関してははっきりした言い伝えはない。きっと数百年後には製菓会社と百貨店チョコレート売り場の守護聖人となるであろう。

 少し古い研究だがドイツの神経学者Klugerらは、欧州各地の13から21世紀にかけての聖ウァレンティヌスの341例の図像を検索し、半数にあたる143例でてんかん患者が描かれていたという。その内訳は101の彫刻と96の絵画で、最も古いものは13世紀に遡り、最も頻繁に見られたのは18から19世紀だった。てんかん患者は女性(n=18)よりも男性(n=122)が多く、年齢別の内訳は 17人の乳児、35人の小児、7人の青年、84人の成人でした。発作のタイプは、強直発作(n=53)が最も多く、無緊張発作(n=13)がこれに続いた。

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