(週刊朝日2022年2月25日号より)
(週刊朝日2022年2月25日号より)

「肉体面だけでなく、メンタル面にも影響を与えます。テストステロンにはドーパミンの分泌を高める働きがあるので、テストステロンの値が高い人は活動意欲が強くなる。また、社会貢献をするようになる、嘘をつかなくなるなどの実験結果もあります」(井手教授)

 興味深いのは、テストステロンは、恋をしたり結婚したり、あるいは子どもと添い寝をしたりすると低くなる。これはテストステロンが「社会参画・積極性」と緊密なホルモンだから。ドメスティックな感情が濃くなると一時的に下がるのだ。

 井手教授によると、ストレスに弱いのもテストステロンの特徴だという。50代は仕事でも家庭でもストレスを抱えることが多い年代。そのため、「加齢以上にテストステロンが落ちてしまう人もいるわけです」。

 LOH症候群でも気力の低下が認められるため、「うつ状態」になりがちだ。ところが抗うつ剤を飲むと、さらにテストステロンは減少するという。井手教授が続ける。

「だからうつ病と診断されて薬を服用してもよくならない場合は、一度、LOH症候群を疑ったほうがいいかもしれません」

 精神疾患なのか、LOH症候群なのかで、受診先も精神科、泌尿器科などと変わってくる。

 さまざまな機能に作用するテストステロンだが、その減少が前出のユウイチさんのように性欲低下や、「朝勃ちしない」原因ともなり得る。そして、朝勃ちがないのは、実はもっと大きな病気が潜んでいる危険性がある。

「いわゆる朝勃ちというのは生活習慣病のバロメーターです」

 そう指摘するのはアンチエイジングに特化した治療をするDクリニック東京の安田吉宏院長だ。

 男性の性器にあたる陰茎海綿体は、刺激を受けると血流が増し、体積が増大する。これが勃起である。夜間の睡眠には、「ノンレム睡眠(深い眠り)」と「レム睡眠(浅い眠り)」があり、交互に繰り返しながら朝を迎える。レム睡眠は、「体は休んでいるが、頭は働いている」状態。自律神経の働きも活発になるので勃起という生理現象が起こる。つまりレム睡眠中に目覚めれば「朝勃ち」が起こっているのだ。

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