今夏、「週刊少年ジャンプ」で連載25周年を迎えた漫画「ONE PIECE」。その冒険物語は、多くのファンの胸に深く刻み込まれてきた。最新映画もまた重厚な作品だ。AERA 2022年8月8日号は、谷口悟朗監督に制作の舞台裏、原作者・尾田栄一郎さんについて聞いた。
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最新映画「ONE PIECE FILM RED」で新時代の歌姫・ウタの歌唱キャストを担うのは、気鋭の歌い手・Ado。主題歌や劇中歌は、中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦基博の7組のアーティストが楽曲提供したことでも注目を集めている。
「最初は音楽映画にするつもりはなかったんですよ」
そう説明するのは、谷口悟朗監督だ。
「伝説のジジイがすごい力でルフィたちと戦うというプロットをいくつか出したら、原作者の尾田さんが、『伝説のジジイを描くのはもう飽きたんだ』と。なら最初に言ってよ!って(笑)」
だが、伝説のジジイを外すということは、パワー系・マッチョ系の敵がいなくなることでもある。強いライバルをどう表現するかを模索するなかで、ウタにたどり着いた。
近年、映画界では音楽に力を入れた作品が増えている。アニメ作品も同様で、「竜とそばかすの姫」や「SING」など話題作も相次いだ。
「アニメと音楽は相性がいい。ワンピースでも、音楽を本格的に取り入れましょうとなったんです。せっかくだから派手にいこうとブラッシュアップしていって、生まれたのがウタでした」
■「伝統」を突破する
谷口監督がワンピースに携わるのは、ワンピース初のアニメ作品「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」で監督を務めた1998年以来になる。その間、尾田さんはワンピースを描き続け、谷口監督は「コードギアス」シリーズなど人気作を手掛けてきた。
24年後の再会には、どんな意味があるのか。谷口監督は言う。
「作品以外の“新しさ”への期待も感じました。テレビシリーズが1千話を超える長期プロジェクトになると、あちらこちらにシステムを維持するためにできてしまったお約束のようなものが積み重なってしまう。そこに外部の人間が入ることで、伝統のようなものをいい意味で突破したいのではないかと解釈しました」