衆院を解散し、公明党の山口那津男代表(右)らにあいさつする岸田文雄首相/2021年10月14日、国会内
衆院を解散し、公明党の山口那津男代表(右)らにあいさつする岸田文雄首相/2021年10月14日、国会内
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 連立政権を組む自民、公明両党間の関係がぎくしゃくしている。事の発端は、夏の参院選での「相互推薦」協議で、自民党が推薦を渋ったこと。今回の摩擦の影響は、選挙だけにとどまらない可能性もある。AERA 2022年2月28日号から。

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 自公の間に吹くすきま風は、政策にも影を落とす。政府・自民党は、北朝鮮のミサイル開発などへの対抗策として、敵国の基地や拠点を攻撃する「敵基地攻撃能力」を容認する安全保障政策を取りまとめる方針だ。これに対して公明党は「いささか古い議論の立て方だ」(山口那津男代表)と慎重な姿勢を見せている。

 対中国外交でも、自民党は安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが強硬論を唱えるのに対して、公明党は強硬路線とは距離を置く。創価学会の池田大作名誉会長が日中国交正常化に尽力したことが公明党・創価学会にとっては「大きな誇り」となっており、それが公明党の対中融和路線につながっている。米中対立が激しくなる中で、政権与党の自民、公明両党の立ち位置の違いが表面化する可能性がある。

AERA 2022年2月28日号より
AERA 2022年2月28日号より

■策士おらず助かる首相

 とはいえ、自公の「熟年の危機」は深刻にはならないとの見方もある。安倍・菅政権で公明党の国会対策委員長を務め、いまは選挙対策委員長をしている高木陽介氏はこう話す。

「両党はこれまでも多くの危機を乗り越えてきた。参院選の推薦をめぐる今回の摩擦も、知恵を出して解決できるのではないか。連立の深刻な危機にはならないと見ている」

 一方で、公明党とのパイプが細いことが、岸田文雄政権の弱みになっているという見方も自民党内にはある。公明党は時に、給付金などバラマキ政策を求めるが、その半面で、3千人に上る地方議員のネットワークを通じて民意を吸い上げる強みを持っている。岸田首相がその公明党パワーを政権の力に引き寄せられないようだと、これまでの自公政権のような強靱さが出てこないかもしれない。

AERA 2022年2月28日号より
AERA 2022年2月28日号より

 自公の亀裂に目を凝らしている自民党の幹事長経験者が最近、こう語っていた。

「立憲民主党に策士がいたら、自公を引き離そうと手を打ってくるだろう。その策士がいないから岸田首相は助かっているだけだ」

(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2022年2月28日号より抜粋