東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、北京五輪を観戦して、日本選手のメンタリティーに変化を感じた。

【写真】北京五輪の男子ビッグエア決勝2回目の演技を終えた大塚健選手

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 北京五輪をテレビで観戦しながら、漠然とだが考えさせられたことがある。競技によっても違うと思うけど、日本選手のメンタリティーはだいぶ変わってきたなと感じている。

北京五輪の男子ビッグエア決勝2回目の演技を終えた大塚健=2月15日、北京・ビッグエア首鋼

 例えば、2月15日に行われたスノーボードのビッグエア男子決勝。大塚健は9位に終わったのだが、「(3回目は難度を)抑えたりとかして、4位とかに終わったりそういうのとかは絶対に嫌だし、自分がそれで抑えて納得できない部分があった。これで攻めた結果がこうなっているが、大会に勝てなかったのは悔しいですけど、次につながればいいなと思います」とのコメントを聞いた。競技のことは詳しくわからないが、「最高難度の技を決めて金を狙う」のか「難度を抑えてメダル圏内」なのかの選択で、「金」を狙ったという。

 絶対的な優勝候補であれば、「金」だけを狙うのだろうが、どうやらそうではなかったらしい。「メダルを取る」ことを目指しても良かったのではないか……とも考えてしまう。だが、大塚選手は違った。他の競技も通じて感じることだが、「五輪という舞台でメダルを取る」ことが第一目標というよりも「大舞台で自分の最高のパフォーマンスをする」ことを目指している選手が増えたと感じる。その先にメダルがあるという感覚だ。

 とても良いことだと感じる。かつて五輪は「お国のため」との意識が強く、期待の高い選手がメダルを取れないと、批判もあったと思う。だが、五輪への出場権を獲得したのは、その選手の努力であり、五輪は4年間磨いてきたものを発揮する場である。自分で納得する基準となる「物差し」は「メダル」という選手もいるだろうし、逆に「最高のパフォーマンス」であってもいい。そう感じている。

 スノーボードの男子ハーフパイプで、平野歩夢が誰もやったことのない技で金メダルを獲得した。フィギュアスケート羽生結弦は4回転半のジャンプ(クワッドアクセル)に挑んだ。どんな結果であろうと、選手にとって満たすものがあれば、それでいい。

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