まず考えられるのは、露出の機会に大きな差があった点だろう。特に顕著な違いが見られたのが、メダル決定戦後に選手を表彰するフラワーセレモニーの場面。東京五輪では花束「ビクトリーブーケ」が手渡されていたが、北京五輪では花束の代わりにビンドゥンドゥンの人形が贈呈され、「マスコットセレモニー」の様相を呈していた。
東洋大学経営学部マーケティング学科の長島広太教授もマスコットキャラの贈呈について「(北京大会では)周到に作戦を練っていたのでは。あれはちょっとすごいなと思いましたね」と驚きを口にし、こう続ける。
「ビンドゥンドゥンは露出の機会が多く、なおかつ花束の代わりに贈呈することで勝者と結び付いたという点が大きかったのだと思います。それによって、単なるオリンピックのキャラクターという位置づけではなく、メダルに相当する特別な意味合いを持たせることができたのだと思います」
中継では、表彰された選手たちがビンドゥンドゥン人形の頭をなでたり、高く掲げたり、嬉しそうに見つめたりする様子が映し出されていた。そしてSNSでは、ビンドゥンドゥンとのツーショットを投稿する選手も多かった。
「スキージャンプの小林陵侑選手がゼッケンの胸の部分にカンガルーの袋のようにビンドゥンドゥンを入れてインタビューに臨んだように、まさに勝者の一部になっていました。また、フィギュアスケートのエキシビションの時には羽生選手らスケーターたちとビンドゥンドゥンが戯れている姿が映し出されていました。選手との関係性を目にすることによって、あの人の愛でているものはいいねといった雰囲気が生まれていったのだと思います」(長島教授)
選手とビンドゥンドゥンとの関わりから、日本国内でも「ゆづドゥンドゥン」といった言葉が生まれ、ツイッターでトレンド入りしていた。「あだ名が付いたというのは、人々が身近に感じている一つの証しです」(同)
愛でていたのは現役選手だけではない。