ジェンダー平等の認識に欠けるのではないかと質問を重ねる記者たちと森氏の返答がかみあわない。終盤に質問に立った澤田さんも粘り強く追及し、やり取りのなかで「私は(会長職に)適任ではないと思います」と発言。森氏に一矢を報いたと、ツイッターで名前がトレンド入りするほど注目された。
「話題にはなりましたが、僕には反省ばかりです。森さんから認識欠如の具体的な言葉を引き出せなかったのは、記者たちの質疑を引き継ぐ形で、最後のゴールが決められなかったということですから」
澤田さんはラジオの機動力と利点を生かし、顔の見える記者として、点と点の情報を結び、受け手が理解しやすい線の形にした報道を意識する。
「でも、僕一人ではできません。番組スタッフや記者仲間との連携、上司の理解があってこそです。とくに家族の応援はめちゃくちゃでかいです。妻は番組の企画や構成まで一緒に考えてくれる同志的存在。僕の見方へのバイアスを指摘し、修正してくれることもあります。娘たちが成長したとき、誰もが生きやすい世の中であってほしいと、僕がジェンダー問題をライフワークにするようになったのは、妻の影響が大きいんです」
支えてくれる人がいるから、報道の最前線で、取材相手に真正面から立ち向かう勇気を奮い立たせることができる。
「自分がラジオに関わる間は、信頼を失うことはしたくない。メディアの矜持を大切にして、リスナーの一歩先を照らす報道を目指したいです」
(ライター・角田奈穂子)
※AERA 2022年2月28日号