国民民主党が、衆議院で政府の予算案に賛成した。予算案は翌年度の政策の骨格を決めるもので、これに賛成すれば、与党の政策を大筋で承認することになる。与党と対峙する「野党」であれば、これに賛成することはできないというのがこれまでの「常識」だった。立憲民主党の泉健太代表が、「与党か野党かということまで問われるぐらいの大きな採決だ」と批判したのも頷ける。
「『野党は反対』という前例踏襲ではなく、何が国民生活にとって最良かという観点から判断した」と言う国民民主党代表の玉木雄一郎氏だが、ほとんど意味不明だ。玉木代表は、夏の参議院選挙に向けて「改革中道の仲間を増やす」という方針も表明している。その真意はどこにあるのか。
まず、「改革」というのは、日本維新の会が昨秋の衆議院選挙で、唯一の「改革」政党を標榜して大きく議席を増やしたことにあやかって、自らも「改革」政党だという旗を掲げたのであろう。
次に、「中道」を掲げたのは、野党共闘に共産党が入っていることに、「共産主義に与するのか」という「左翼批判」が高まり、立民と共産が議席を減らしたのを見て、自分たちは、左翼でもリベラルでもなく「中道」であるとアピールしようと考えたと見て良いだろう。要するに、夏の参院選対策で受けを狙ったということだ。
だが、国民民主の看板には偽りがある。まず、「改革」について。国民民主の参院選候補には連合の組織内候補が多い。連合は、経団連とほぼ同じで、業界ごとの利益を守るために政治家を国会に送り込む。電力や重工など、原発メーカーの利益のために国会で脱原発を妨害してきたのはその典型だ。また、昨年の衆院選では、ハイブリッド車温存を狙うトヨタの組合が、自民の協力を得るために立候補予定だった旧民主系の組織内候補の出馬を選挙直前にやめさせて自民候補を当選させるという暴挙もあった。脱炭素や脱原発の改革に対して、国民民主は抵抗勢力なのだ。